憧れの先輩と付き合いはじめたら、不可解なことが起こるようになった。バイト先に現れるようになった女性の正体は…【書評】
公開日:2025/2/7

恋人だと思っていた人が、本当の恋人ではなかったら――。『浮気男と生き霊彼女』(ちょん。)は、主人公・めいの一目惚れからストーリーがスタートする。一目惚れをきっかけに、相手の男性と距離を縮めていくのだが、思いがけないオマケがついていた。
大学生になるとともに上京しためいは、レンタルビデオショップの店員・りょうに一目惚れした。同じ店でアルバイトをスタートするのだが、めいは彼にどんどんハマっていくのだ。あるきっかけで男女の関係になり、りょうと交際していると思い込んだことで、恐怖の体験が始まった。
ある日、めいはバイト先でピンクの髪をした女を見つける。次に見たときにはいなくなっていたことから、幽霊なのかもしれないと思っていたが――。
その女は、りょうの本命彼女の生霊だったのだ。自分が本当は恋人ではなかったことにもゾッとするが、自分のことをじっと見ていた女が、実は彼氏だと思っていた男の本命だったとは鳥肌ものである。かっこいい自慢の彼氏は、一転してただの浮気ものだ。
恋愛と執着は紙一重なのかもしれない。相手に依存し、生霊を飛ばすほどの執着をみせる本命彼女には一種の狂気のようなものを感じる。特に、作中に描かれていた生霊の表情は、まるで「あなたのことを知っている」と言っているようだった。強い執念のようなものを感じさせる。
また、オカルト的な恐怖とヒトコワ系の怖さが混ざり、恐怖や怒り、悲しみなどの負の感情の波が大きくなって押し寄せることも、この作品の魅力のひとつである。段階を経て、「幽霊の正体は彼氏の本命彼女の生霊だった」ということを知ることで、主人公の気持ちに共感し、ゾッとする感情を追体験できるのだ。
この修羅場を主人公はどう乗り越えたのか、生霊を飛ばした女や浮気男はどうなったのか――。手に汗握りながら、最後まで読んでいただきたい。