呪いの人形に刺した葉を抜いたら、病室から叫び声が…? “意味がわかる”とゾッとするモノ語り【書評】

マンガ

PR 公開日:2025/1/31

意味がわかると怖いモノ語り湖西晶/少年画報社

 ホラーというものは、想像の余地を残す作品が多い。主人公たちが恐ろしい事態に巻き込まれ、試行錯誤しながら解決を試みては、なんとか平穏な日々を取り戻す……ように見えて、最後の最後でなにも解決していなかったことが示唆されたりする。そのとき、ぼくらは「一体なにが悪かったのだろう」「どうして解決できなかったのだろう」と頭を捻る。最近ではホラー作品に対する考察をネット上にアップしている人もいて、非常に面白い。あの描写にはこんな意味があったのか、と余白が埋まっていくのは気持ちが良いし、全貌が見えたときに恐怖は何倍にも膨らむ。

 湖西晶さんのヒット作『意味がわかると怖い4コマ』(双葉社)はまさにそういった作品だった。何気ない日常を描いた4コママンガのなかに、実は恐怖が隠されている。それを読み明かしたとき、読者は謎に辿り着いた心地よさと気味の悪さを同時に味わうのだ。

 そんな湖西さんがこのたび、ショートコミックにチャレンジした。それが『意味がわかると怖いモノ語り』(少年画報社)だ。一つひとつのエピソードにしっかりページを割いてある分、本作で感じられる怖さは4コママンガ以上だろう。

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 たとえば、「刃物」というエピソード。これはふたりの少女、ミチルとチハルの話だ。ふたりはともに歌劇団のスターを目指していて、オーディションを間近に控えていた。しかし、ある日、ミチルの顔がパックリ割れてしまう。それだけではない。全身に奇妙な傷口ができてしまったのだ。出血は少ないものの、縫合しても傷が塞がる様子はない。それによってミチルはオーディションを諦めることに。

 ミチルの症状は奇病によるものなのか? 答えはNO。実はチハルが「呪い」をかけていたのだ。呪いたい人物の髪の毛を閉じ込めたロウ人形にヒイラギの葉を刺すと、その人物の身体には見えない刃物が刺さった状態になる。すると傷口は治らず、一生苦しむことになるだろう。チハルはこんな呪いを試した結果、現実のものとなってしまったのだ。

 すべてはチハルの嫉妬によるものである。しかし、病床のミチルから真摯な思いを聞いたチハルは、自身の行いを後悔する。そして、呪いの人形に突き刺していたヒイラギの葉をすべて抜いたのだった。直後、病室からはつんざくようなミチルの叫び声が聞こえてきて――。

 身体に刃物が刺さったとき、うかつにそれを抜いてはいけないといわれる。刺さった刃物が傷口を押さえて止血状態になっているため、抜けば一気に出血してしまうからだ。

 では、呪いの人形からヒイラギの葉がすべて抜かれた場合、ミチルの身体は一体どうなってしまったのだろうか……。想像すると、非常に残酷な答えに辿り着けるだろう。

 本作には他にも、人を変えてしまう不思議な「鏡」、顔を変化させる魔法の「パック」、過去に戻れる「鳥居」など、さまざまな「モノ」をテーマにしたエピソードが収録されている。いずれも想像の余地を残しながらも、考察の難易度はそこまで高くはない。考察系ホラー好きも、とにかく怖がりたいという人も、どんな人でも楽しみながらゾッとできる一冊だ。

文=イガラシダイ

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