「『トモダチゲーム』片切友一は元々ゲス顔をするキャラではなかった」原作担当が振り返る、作画担当に全てを伝えない作品づくり【『トモダチゲーム』完結記念 山口ミコト×佐藤友生インタビュー】

マンガ

更新日:2025/2/15

――ちなみに作中ではさまざまなゲームが登場しますが、どういった作り方が主体だったのですか?

山口:これをするためには誰かを裏切らないといけないという選択肢を、幼い子どもがやるようなゲームにハメ込んでいくっていうのが発想の起点ですね。しかもできるだけシンプルに。ルールを複雑にすると、自分でも把握できないので。

――ゲームごとに提示されるルールに対して、佐藤先生の把握具合はどんな感じだったんでしょうか?

advertisement

佐藤:やっぱり、ちょっと難しくなると「これはどういうこと?」ってなりますよね。でも、それがかえってよかったのかな。読者目線で打ち合わせの時に聞けるので。できるだけ作画に入るまでに納得できるようにはしていました。

――シンプルなゲーム性とはいえ、けっこう複雑な部分もありますからね。

佐藤:一番はお金の計算です。これはものすごく慎重にやっていましたよね。

山口:何度も何度も「これ合ってます?」って(笑)。

佐藤:編集さんと総出で計算してね(笑)。

山口:ただ読者はそこまで細かい額に対してこだわって読んでいるわけではなかったみたいです。基本的には皆さんキャラクターの感情を追って読んでいる。ゲーム自体の構造は理解できてなくても、登場人物が今どういう感情で、どんなことで板挟みになっているかっていうものが演出のスジになっているので。

――アイデア面や作画面など、様々な角度から大変だったのはどのパートでしたか?

佐藤:私は島でサバイバル(トモダチ殺し合いゲーム)をやっていたときですね。ちょうど出産の時期と重なって……。作画もガタガタで、記憶から消したいくらいしんどかった。

山口:ただ、それは高いレベルでの話ですよ。読者からネガティブな反応があったわけではないです。
僕の場合は最後ですね。大筋が決まって、あと何話やるのかっていうところで、二転三転とまでは言わないけど「なんかもっとむちゃくちゃにしたい!」っていう気持ちが芽生えまして。

佐藤:そうなんだ。

山口:「もう手に負えない!」ってとこまで行きたいと。読者に「後は畳んでいくだけか」って思われるのがイヤだったんです。むしろ「これ、どうするの?」って思わせたい。それは描き手の感覚としても必要な温度であって。「こうなったら、来月の俺を困らせてやろう」と。

佐藤:そこは「来月の俺に任せよう」じゃないんだ。

山口:そう。「やっちまった!」っていうとこまでいかないと(笑)。

――最後の最後まで、刹那的な面白さを求めるところは変わってなかったのですね。

山口:そうじゃないと読者に対して誠実ではないのかなって。ただ絶対的に意識していたのは、みんなが納得するエンディングに向かうってことですね。友一の罪をしっかり描く。そのうえで読者からも許されるところまでいけたら、最高のエンディングだなって思ったので。

佐藤:私は「友一が可哀そう。不憫すぎる…」って思ったけど(笑)。

山口:そういえば「容赦ないな!」っておっしゃっていましたよね(笑)。

――そんな中で辿り着いた最終回を迎えた時は、どんな感慨があったのでしょうか?

山口:寂しいというよりも、怖かったです。「これで終わるんだ……」と。初めての感覚でした。それは10年以上やったからでしょうね。彼らの世界がそこで途切れるような気がして。「言い残したことないか?」ってキャラに聞いて回る感じ。心残りはないか、すごく気になっちゃって。いわゆる「終わった!」「やり終えた!」っていう充足感はあまりなかったかな。

佐藤:私のほうは気楽なものでした。作画の抜けがないかが心配だったくらいで。最終回を描いたら終わりじゃなくて、コミックスのカバーとか色々と作業が残っていましたし。ただ、最終巻のエピソードを描いている最中は、さまざまなキャラクターが登場する中で、「この子も描き納めかもしれないなぁ」という思いは常にありました。だから、できるだけクオリティを上げていこうと。
ただ最終話を描き終えても「終わったー!」という感じはあまりなくて、「いつかまた会えるんじゃないかな」っていう感触が先にありましたね。だから、そこまでの寂しさはないです。

――ちなみに、この10年8カ月でお二人は“友達”になったのでしょうか?

山口:それは……。難しい質問だな(笑)。

佐藤:仲は悪くないけど、「一緒に飲みに行こうぜ!」みたいな関係では全然ないですよね。

山口:人に説明するなら“信頼できる仕事のパートナー”。でも、これってある意味、友達よりも価値が高い関係だと思うんですよ。友達になっていたら、なぁなぁになってしまったところもあるだろうし。

――とてもいい距離感のパートナーだったのですね。

山口:佐藤先生だからこそ、ここまで続けられた。それは間違いない。本当に感謝しています。

佐藤:えー、嬉しい。

取材・文=奈良崎コロスケ

あわせて読みたい