電車で隣のおばあさんにもたれ、居眠り。しばらくすると、ガマンの限界がきて…!? 圧倒的な「楽しい!」がぶつけられた異色の個性派コミックエッセイ【書評】

マンガ

公開日:2025/2/17

 マンガを描く人は絵が上手い。イラストを仕事にする人も絵が上手い。そんな誰もが持つ常識を、パワフルかつエネルギッシュにぶち壊すマンガ。それが『カッラフルなエッッブリデイ』(むめい/KADOKAWA)だ。

 むめい氏の幼少期から現在までの、人生におけるさまざまなエピソードを描いた本作だが、おそらく大半の人が、マンガの内容よりまず先に独創的かつパワフル、そしてシュールな絵のタッチに衝撃を受けることだろう。

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 著者自身も自負している通り、彼女の絵はお世辞にも上手と言えるものではないかもしれない。だがその絵からは、紙や画面の上から溢れんばかりの圧倒的なエネルギー・勢いを感じる人も多いに違いない。

 また作中で描かれるエピソードも、幼少期の子どもらしい型破りな内容から、大人になってからも「そんなことある!?」と思わずツッコみたくなる突拍子もない話が満載。そのスピード感に取り残されそうになりつつ、勢いについ笑ってしまうこともあるだろう。

 日常の大トラブルから些細なハプニングまで、さまざまな物事を独特の視点で捉えるむめい氏。その豊かな個性は、彼女と同様独特でユニークな視点を持つ家族の影響もきっと大きい。それを象徴するエピソードでもあるのが、作品序盤にある幼い作者と祖母の思い出だ。

 ある日、祖母と某人気キャラクターのぬり絵勝負を始めたむめい氏。まだ幼い彼女はこの勝負にとても真剣だったが、そんな彼女の気概とは反対に祖母は該当のキャラクターの絵を、元の姿とは似ても似つかぬ配色で塗り始める。

 慌てた作者が祖母に正しい色を横から指摘するが、「ぬり絵に負けはない、二人とも優勝」「好きな色で楽しく塗れたらそれが優勝」と、祖母は相変わらず自由に絵を塗り続けた…という話だ。

 絵を描くことに、勝ち負けはない。上手な絵が正解、下手な絵が間違いではない。好きな絵を楽しく描くことが優勝。そう言ってくれる人のそばで育ったからこそ、本作はこうしてこの世に生まれたのだろう、と思わされるエピソードでもある。
 
 そして読む側もまた絵の技術以上に、むめい氏の「楽しい!」「描きたい!」の気持ちを強く感じるからこそ、このマンガはこれほどまで大勢に読まれているに違いない。平面からでも確かに感じる、膨大なパワーと勢い。読者を圧倒するそのエネルギーに思わず笑い、そしてグッと惹き込まれる1作だ。

文=ネゴト / 曽我美なつめ

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