ユルい空気感の中に人生の金言が満載! 姉と弟のシュールなやりとりがクセになる、益田ミリ『そう来る?僕の姉ちゃん』【書評】

マンガ

公開日:2025/2/19

 ゆるっとしたタッチで、時にかわいく、時にシュールなコミックエッセイをこれまでに多数執筆している益田ミリさん。『そう来る?僕の姉ちゃん』(マガジンハウス)は、素朴でどこにでもいる“僕”と“姉ちゃん”の何気ない会話を描いた作品だ。

 互いに立派な大人だが、縁あって束の間、姉弟ふたり暮らしをしている。ふたりの会話は本当に何気ない日常にある、一見ありふれたようなものもある。だが全然難しくもなんともない、ありふれた会話の中にぽろっと何気なく出たセリフ。その言葉にハッとさせられたり、時にくすっとしたり。緩やかなふたりの会話とその空気が、絶妙に読みやすいテンポ感で描かれている。

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 そんなムードの作品ゆえか、「さあ読むぞ!」と気合いを入れずとも目を通せる気軽さも本書の大きな魅力だ。

 一方その中でも、ふたりの会話には時折鋭く物事の本質を掴むような発言も。特に“姉ちゃん”のセリフは金言も満載。

個性とは「生まれてきた自分」。

手帖に事実を書くと誰が決めたのか。わたしたちの心はもっと自由であるべき。

 自分が“僕”であれば、思わず「それってどういうこと?」なんてツッコみたくなってしまうセリフもたくさんある。

 そこを敢えてスルーし「ふうん」で済ませる“僕”のユルさも、きっと“姉ちゃん”にとっては心地良い距離感なのだろう。とはいえ、それでもやっぱり姉ちゃんは“姉ちゃん”だ。上手いことを言ったように見せかけてちゃっかり弟を使おうとするシーンなどは、兄弟がいる人であればちょっとした「あるある」という共感も伴って読めるに違いない。

 ライトに読み始められたかと思えば、ふたりの独特の空気感に、いつの間にかこちらものんびりしてしまうこと間違いなし。でも読み終わった頃には、人生において何か大事な言葉を得られたような、そんな気分にもなる不思議な作品だ。

文=ネゴト / 曽我美なつめ 

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