関水渚さんが選んだ1冊は?「私は永遠に村上さんに片想いなんだろうなと思いました」

あの人と本の話 and more

公開日:2025/2/16

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年3月号からの転載です。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、関水渚さん。

(取材・文=松井美緒 写真=TOWA)

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 子どもの頃から本が好きで、学生時代は学校の図書室の本を片端から読んでいたと言う関水さん。

「村上春樹さんの作品が大好き。情景が頭に浮かんで、その世界に自分もいるような気持ちになります」

 とくに愛する作品が『ノルウェイの森』。主人公“僕”の大学の同級生・緑に強く惹かれ、共感する。
「とても寛容で愛情みたいなものが、当たり前に備わっています。緑ちゃんが“僕”に与えてくれるものって、ものすごく大きいじゃないですか。でもそれを苦としないというか、自然にできてしまう」

 緑と“僕”が近所の火事を物干し台から見物する場面が印象深い。

「緑がギターでフォーク・ソングを歌うんです。こんなに面白くてかわいくて素敵な女性、ほかにいないですよね」

“僕”を幸せにできるのは緑だけだと思うのだが……。

「村上さんの小説の主人公は、緑ちゃんではなくて直子のような女性が好きなんですよね。逆に緑ちゃんや私のようなタイプは、主人公と村上さんが大好きなんです。でも決して選ばれない。『ノルウェイの森』を読んで、私は永遠に村上さんに片想いなんだろうなと思いました」

 関水さんは今、ドラマ『家政婦クロミは腐った家族を許さない』で主演を務めている。裕福な灰原家の一家で死亡事故が発生、生存者は関水さん演じる家政婦の黒見白華、という衝撃的なシーンから物語は始まる。

「本当に面白いストーリーです。黒見の目的は、『理想の家族』を作ること。人が生きる上で家族ってなんだろうと考えさせられましたし、人間の業というか本質がすごくリアルに描かれています」

 ファミリー・パニックホラーと銘打たれる本作。黒見は「理想の家族」に異常に執着し、それを守るためには手段を選ばない。

「視聴者の方に、黒見の底知れない不気味さを感じていただけるといいですね。そのために、監督と話しながら動きや表情を試行錯誤するのはとても楽しいです」

 以前、関水さんの出演作をプロデュースした祖父江里奈さん(『ブラックガールズトーク』など)、吉川肇さん(『シガテラ』など)と再び一緒に仕事できるのも嬉しい。

「お二人の作品は必ず面白くなるという絶大な信頼があります。このドラマもホラーではありますが、金曜日の夜にリラックスして楽しんで観られる内容になっています」

ヘアメイク:井手真紗子 スタイリング:後藤仁子

せきみず・なぎさ●1998年、神奈川県生まれ。2019年、『町田くんの世界』で映画初主演。同作で第62回ブルーリボン賞新人賞受賞。他の出演作に、ドラマ『ブラックガールズトーク』、NHK大河ドラマ『どうする家康』、映画『ウェディング・ハイ』、「コンフィデンスマンJP」シリーズなど。

『ノルウェイの森』(上・下)
村上春樹 講談社文庫 各715円(税込)
飛行機がハンブルク空港に着陸し、ビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。“僕”は1969年の秋のできごとを思い出し、激しく混乱する。当時、東京の大学に通っていた“僕”は、自死した友人の恋人・直子と再会しデートを重ねていた。しかし彼女は姿を消してしまう。“僕”は同じ大学の緑と出会い、惹かれ始める。

ドラマ24『家政婦クロミは腐った家族を許さない』
原作:きづきあきら+サトウナンキ『家政婦クロミは腐った家族を許さない』(ぶんか社刊) 出演:関水 渚、高橋光臣、阿久津仁愛、大熊杏優/藤原紀香 毎週⾦曜深夜24時12分〜24時42分 テレ東系 
●高級住宅街に住む灰原家。裕福で理想的な家族だが、ふたを開けてみれば問題だらけ。そんな家族のもとを優秀な家政婦・黒見白華が訪れる。戦慄のファミリー・パニックホラー開幕!
(c)「家政婦クロミは腐った家族を許さない」製作委員会