嫁姑戦争かと思いきや、まさか姑から“推し認定”されていた!? 義母の冷たい仮面の下に隠された本音とは…【書評】

マンガ

公開日:2025/2/27

 多くの家庭において、姑と嫁の関係構築はきわめて複雑な問題のひとつ。現在は家庭の在り方も多様化し、姑と嫁が適度な距離を保ちながら良好な関係を築く例も増えてきたが、それでもひそかにストレスを抱えている人は少なくないだろう。

推し嫁ルンバ 嫁ぎ先のお姑さんがいつも私に冷たいと思っていたら、実は推しとして見られていた話』(かときちどんぐりちゃん/KADOKAWA)は、そんな嫁姑問題をテーマとした新感覚のハートフル・コメディだ。

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 主人公・朋美は、出版社で編集長を務めるやり手のキャリアウーマン。30代の終わりに出会った雑貨店の店主・ひろしと結婚することになり、結婚の挨拶に向かう。しかし、初顔合わせの際、ひろしの母親・エマは朋美と目も合わせず、一言も口をきいてくれなかった。嫌われてしまったと思い込み落ち込む朋美だったが、実はエマは凛とした雰囲気を持つ朋美にぞっこんで――!?

 前提として、日本では「女性が家に入る」という考え方が根強く、姑が自身のやり方を重視し、嫁がそれに合わせるよう求められるケースが大半だった。また、息子を大切に思うがゆえに、嫁に対して無意識に厳しい目を向けてしまう姑も少なくない。一方で嫁の側も、新しい家族の中で居場所を確立しようとして苦労することが多いのだ。

 しかし、本作に登場する嫁・朋美と姑・エマの関係は、そんな従来の嫁姑像から大きく外れている。嫌われていると悲観しながらも、少しでも好かれようと健気な努力を続ける朋美。息子の妻である朋美のことが可愛くてたまらないものの、存在が眩しすぎて顔すら見られないエマ。互いに相手を意識しすぎてうまくいかないふたりのぎこちない愛情表現は、じれったくも微笑ましい。

 一切いがみ合うことなく、むしろどんどん愛が深まる嫁と姑。それぞれの愛情が相手に正しく伝わる日ははたして来るのだろうか。彼女たちの紡ぐ不器用な家族愛の行方を、どうか見届けてほしい。

文=ネゴト / 糸野旬

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