身分も見た目も過去も超えて聖女を目指す。二度目の人生を爽快に生きる転生ファンタジー【書評】

マンガ

更新日:2025/3/17

 『聖女になるので二度目の人生は勝手にさせてもらいます ~王太子は、前世で私を振った恋人でした~』(小々森鵺:漫画、新山サホ:原作、羽公:キャラクター原案/KADOKAWA)は、前世の無念を晴らし、次の人生では自由に生きることを願う主人公の二度目の人生を描いた作品。「小説家になろう」発の人気小説をコミカライズした爽快感のある転生ファンタジーだ。

 18歳の若さで結婚の約束をしていた恋人に裏切られ、失意のまま死んでしまったセシル。過去の記憶を残したまま、17歳のリズとして500年後に生まれ変わった。魔力を持つ者は必ず黒髪・黒目だとされる国で、穏やかな毎日を送るリズは、白髪・赤目で魔力もない平民。国中から次期聖女候補が集められる中、最低条件を満たしていないリズは選ばれるはずはなかった。しかし、リズの不思議な力を見出した神官のロイドによって、聖女候補に選ばれることに。そこからリズの聖女候補としての日々が始まる。

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 二度目の人生では思うまま自由に生きると誓った通り、リズは身分や見た目に囚われずに自分の心に従って颯爽と人生を突き進んでいく。試験や課題で競い合う聖女候補たちからは平民であることや見た目から何度となく虐げられるが、聖女に選ばれる覚悟を持ったリズは徐々にたくましく成長していく。そして、そんな屈することなく生きるリズの姿が、次第に他の聖女候補たちにも影響を与えていく。

 物語の展開を興味深くしているのは、リズと同じように過去の記憶を持ったまま転生してきた人物たちの存在だ。かつての恋人ユージンも転生しており、王太子として現れるのだが、二度目の人生でも彼との関係が紡がれる。現世での再会により過去のすれ違いが徐々に解きほぐされていくのだった。

 前世の悲しみから解放され、ますます自由になるリズ。彼女は果たして聖女に選ばれるのだろうか。逆境にも負けず、二度目の人生を爽快に生きるリズから勇気とパワーをもらえる一冊だ。

文=ネゴト / Ato Hiromi

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