「私に愛を求めるな」不遇な王女が冷酷な王と政略結婚。それは大逆転劇のはじまりだった! 【書評】

マンガ

公開日:2025/3/7

国外追放された王女は、敵国の氷の王に溺愛される』(まりも璃茉:漫画、坂合奏:原作、さくらもち:キャラクター原案/KADOKAWA)は、無実の罪を着せられ国を追われたヒロインの波乱万丈な運命を描いた、予測不能なシンデレラロマンス。政略結婚ものやファンタジーロマンスが好きな人はもちろん、強いヒロインに勇気をもらいたい人にもぜひ読んでほしい作品だ。

 ヒロイン・ジョジュは、大国ドルマンの第一王女。次期女王としての務めを立派にはたそうと日々奮闘する彼女だが、王位継承争いに巻き込まれた挙句、なんと継母殺しを企てた悪女と汚名を着せられるはめに。国を追われ、辺境の小国へ嫁いだジョジュを迎えたのは、冷酷無慈悲と噂のエミリオン王だった。

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 国同士の確執や陰謀、政治的駆け引きなどしがらみが多い政略結婚では、当事者は駒のように扱われるに過ぎない。エミリオン王も例に漏れず、失意のどん底にあるジョジュに非情にもこう告げる。「私に愛を求めるな」。 

 本作の見どころは、ヒロイン・ジョジュの聡明さと強い意志だ。生まれ育った国を追われ、意に沿わない相手に嫁ぐことになっても、彼女は決して絶望にのまれるようなことはなかった。慣れない異国の地でつらい目にあっても希望を失わず、あくまで前向きに努力し続けたのである。

 過酷な状況の中、自らの力で未来を切り開こうとするジョジュの真摯な在り方に、初めは頑なだったエミリオン王もしだいにほだされていく。冷酷無慈悲と謳われていた彼が、ジョジュに対しふとした瞬間に見せる優しさや、予期せぬ危険から守ってくれるシーンは必見だ。

 しかし、さまざまな利害関係や権力闘争が絡み合う王宮の複雑さは、どの国でも同じ。若き王に反発する者も決して少なくない。さらには、元王妃候補の令嬢も現れるのだが――。

 どんな相手に対しても誠実な態度を貫き、徐々に味方を増やしていくジョジュ。理不尽な運命に抗い、自分を貫く彼女の未来をどうか見届けてほしい。

文=ネゴト / 糸野旬

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