「そんなことないよ。可愛いよ」待ちをする“エセ天然女子”。そんな彼女に、モテ無双してきた“あざと女子”が仕掛けた作戦は?【書評】

マンガ

PR 公開日:2025/2/21

新卒の美和ちゃん~社内探偵外伝~文京子:作画、egumi:原作、かたおかみさお・egumi:原案/DPNブックス

 したたかで計算高く、周囲の気を引く小悪魔的な振る舞いを貫く“あざと女子”。男性の庇護欲をくすぐる言葉やしぐさを巧みに使いこなす彼女たちは、驚くほど自己プロデュース能力に長けている。

新卒の美和ちゃん~社内探偵外伝~』(文京子:作画、egumi:原作、かたおかみさお・egumi:原案/DPNブックス)に登場する新卒社員・飯田美和は、まさにそんなあざとさを武器に世間を渡り歩く女性のひとりだ。

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 研究し尽くしたとっておきの笑顔とあざとテクをきっちり装備した彼女は、無邪気さを装いながら、今日もまた新たなターゲットを手玉に取る。

『社内探偵』(かたおかみさお:漫画、egumi:原作/DPNブックス)の外伝に当たる本作では、物語の鍵を握る重要キャラクターである飯田美和がどのように社内で立ち回り、人間関係を操っていくのかがリアリティ豊かに描かれる。

 入社後の新人研修でもさっそく上司に媚びを売り、自身の立場を有利にしようと抜け目なく動く飯田。甘えるべき相手にはとことん甘え、距離を取るべき相手には上手に線を引く。誰にどう接すれば得をするかを瞬時に判断する、彼女の鋭い観察眼と行動力は見事というほかない。

 しかしながら、あざと女子の巧みなテクニックも、相手がこと同性の場合においてはイマイチ通用しにくいのが現実。甘い言葉の裏にある意図をすぐに察し、計算された行動に冷めた目を向ける女性を相手に立ち回るなら、可愛らしさや無邪気さではなく、もっと別のアプローチが必要となるのだ。

 結局のところ、あざとさが武器になるのは、計算を見抜けない、あるいは見抜いても許してくれる人間が相手の場合に限られるのかもしれない。そんな事情を嫌というほど知り抜いている飯田。彼女にとっては、せっかく誘われた同期女子とのランチ会も、何の意味もなさない集まりにすぎないのだが――。

 気乗りしないまま参加したランチ会では思わぬ収穫が。取り繕った笑顔で会話を流していた飯田だったが、しだいに同期女子・小松が自分と同じタイプであることに気づく。

 一見、天真爛漫で人懐っこく、人好きのするタイプの小松。話題が写真におよぶと、「加工のやり方も“映え”もよくわからない」と可愛らしく首をかしげる。しかし、彼女のスマートフォンにはすでに加工アプリがインストールされており、SNSには自然すぎる美肌ショットがずらり。

 本作の見どころは、主人公・飯田が見せる、まるであざとさの教科書のような立ち居振る舞いの数々だ。とりわけ、同期女子・小松のエセ天然ぶりを察したときの彼女の立ち回りはまさに圧巻。

「共感性羞恥ヤバくない?」と無邪気に笑いながら誰もが抱く違和感を代弁し、共感の輪を広げていく。女子ウケを狙うときは、裏表のない自然体を演じて共感を武器にするのが一番の近道であることを、長年の人間観察から経験則として知り抜いているのだ。

 周囲の人間を巧みに味方につけるあざといテクニックを次々と繰り出し、社内での立場を盤石なものにしていく飯田。そんな彼女への謎の処遇に隠されていた社内の秘密とは――?

 はたして飯田は策略の末に何を手に入れ、何を失うのだろうか。ミステリー要素をはらんだ本編とのつながりも意識しつつ、飯田のいっそ清々しいほどの“あざと女子”ぶりを存分に楽しみながら読んでほしい。

文=ネゴト / 糸野旬

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