いくえみ綾の最新作は40代女性漫画家が主人公! キラキラした少女漫画が描きたい彼女の恋と仕事の行方は?『ローズ ローズィ ローズフル バッド』

PR 公開日:2025/3/14

ローズ ローズィ ローズフル バッドいくえみ綾/集英社

 恋だけでは私たちの日常は回らない。特に、ここ何年も恋なんてしていないという大人たちにとって、それは当然の感覚ではないだろうか。仕事中心の日々の中、「やりたいこと」と「できること」の狭間で、もがきながら必死に生きているうちに、いつの間にか歳を重ねていた。これまで手に入れたものもあるけど、どうせならもっと「やりたいこと」に挑戦してみたい。そう意気込んだ矢先、そのチャンスと新しい恋のチャンスが同時に巡ってきたら……。あなたは仕事と恋愛を上手く両立させることができるだろうか。

ローズ ローズィ ローズフル バッド』(集英社)は、そんな40歳漫画家の人生の転機を描く恋と仕事の物語。いくえみ綾氏による新作漫画だ。いくえみ綾氏といえば、『潔く柔く』や『プリンシパル』(どちらも集英社)など、女子高生を主人公とした少女漫画のイメージが強いが、40代の漫画家を描いた本作は、まさに大人のための少女漫画だ。

 主人公は、「神原薔子」というペンネームで活動する漫画家・神原正子(40歳)。もともとキラキラの少女漫画を描くことを夢見て王道少女漫画誌で22年前にデビューしたものの、泣かず飛ばずで、代わりにそこそこ売れたのは「ファブ郎」というコミカルなキャラクターの漫画。その連載を17年続けながら、今もなお「少女漫画を描きたい」という思いを持ち続けている。だが少女漫画のネームを描こうにも、長らく恋愛から遠ざかっていた正子には何のアイデアも浮かばない。そんなある日、ひょんなことから、ドラマ制作会社プロデューサーでバツイチ子持ちの鷹野怜と知り合い、久々に“胸キュン”を感じる。どうやら怜も正子のことが気になっている様子。このときめきがあれば、もしかしたらキラキラの少女漫画を描けるかもしれない。正子の仕事は、恋は、一体どこに向かうのだろう。

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「ファブ郎」を語り部として綴られる本作は、どうしてか、何度もクスクス笑わされるのに、ページをめくればめくるほど胸が苦しくてたまらない。正子の姿に共感せずにはいられないのだ。歳を重ねるごとに今の自分に違和感を覚え、「できること」ではなく「やりたいこと」に挑戦する正子の気持ちも分かるし、何よりも正子のダメダメっぷりも身に覚えがある。生活の中で仕事が第一優先。家事はなおざりで、部屋は散らかりまくり。オシャレをしようにもどんな服を着ればいいのか分からず、化粧も上手くできない。決して周囲に気が遣えるわけでもない。そんな正子が久しぶりの恋に落ちるさまは、あまりにも初々しく、あまりにも危うい。

 大人になればなるほど、どうして恋の動かしかたが分からなくなってしまうのだろう。正子が出会った怜もまた、正子以上に不器用。イケメンなのに、カッコつけようにもカッコがつかず、そこがまた愛おしい。きどらない自然な会話ができるふたりの関係に思わずグッとくる。だが、仕事がノリに乗っている正子は、恋愛ばかりを優先することができない。怜と過ごしてもどこか上の空。「もっと面白い漫画を描くには」と仕事のことばかり考えている正子にヒヤヒヤしながらも、自分にも思い当たる節があると感じてしまったのはきっと私だけではないはずだ。

 大切なものがたくさんあるのは幸せなことだ。だがそれを全て大切にすることはどうしてこんなにも難しいのだろう。どうして本当の気持ちは上手く伝わらないのだろう。傷つくのが怖いからといって、どうして諦めたふりをしてしまうのだろう。「ああ、どうか、正子の恋が、仕事が上手くいきますように」と祈りながら読み進めるうちに、あっという間に読み終えてしまい、次巻が待ち遠しくてたまらない。大人になったあなたも、ときめきと切なさを摂取したいならぜひともこの作品で。“胸キュン”を忘れた大人たちにこそ、この漫画は痛いほど心に響くに違いない。

文=アサトーミナミ

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