長期留学を前に交際0日婚を決めた理由は?SNSでも話題の夫婦の馴れ初め物語【書評】
公開日:2025/3/14

世の中には、様々な夫婦の形がある。恋人として長い付き合いを経て夫婦となる人もいれば、中には時折話題にもなる「交際0日婚」で結ばれた人も。夫婦として籍こそ入れないものの、事実婚として人生を共にするという選択肢も昔に比べればずいぶん当たり前のものとなった。
本作、『付き合って0日で結婚を決めた2人の話』(えむふじん/KADOKAWA)も、著者・ふじんと夫・えむしの“ちょっぴりユニーク”な入籍に至るまでのエピソードが描かれたコミックエッセイである。
これまでにも家族にまつわる様々なエッセイ漫画を描いている著者。そんな家族がどのようにして生まれたか、家族となる前段階で夫婦はどのように出会い結婚を決めたのか。そんな一部始終が描かれた作品ともなっている。
「付き合って0日で結婚を決めた」と聞くと、先述の交際0日婚をイメージする人も多いかもしれないが、この夫婦の出会いの実態を見ていくと、どちらかと言えば古き良き「結婚を前提にお付き合いしてください」を全うした形に近い。
それだけならば一見ありふれた話のように感じるものの、二人の場合、片方が長期留学を直前に控えて交際を始めたことが、経緯をドラマチックにしている。同じ状況に置かれた時、二人のように帰国を待たず「結婚しよう」となるカップルはおそらく少ないのではないだろうか。
恋人が夫婦に変わる時、大事なのはトキメキではなく価値観の一致だ、という話はよく聞く。実際に蓋を開けてみれば、著者・ふじんと夫・えむしの間には、生活するうえで様々な価値観の相違も度々あった。しかし、そんな肝心の場で価値観をすり合わせられたことこそが、二人がお似合いの夫婦だという証なのかもしれない。
元はブログやSNSでも投稿されていた本作。単行本化にあたり、二人の馴れ初めのみならず出会った日のエピソードや、無事入籍した後の新婚旅行のエピソードなども書き下ろしで収録されている。
巻末でも著者が語っているとおり、普段当たり前の存在となった家族との「ふつうの幸せ」は、改めて意識しないとその大事さに気づきにくいもの。本作を通して、パートナーや家族、友達との「ふつうの幸せ」についても、改めてその大切さに思いを馳せてみてはどうだろうか。