「僕はキャンドル、君の悪魔だよ」 ロウソク頭の人食い悪魔と少女が紡ぐ、禁断のダークファンタジー【書評】

マンガ

公開日:2025/3/10

 少女と悪魔の紡ぐ禁断のダークファンタジー『キャンドルと魔女』(chick/KADOKAWA)は、対極にある二者の織りなす不思議な絆を描いた物語だ。異形頭×少女というインパクトのあるカップリングに加え、作中に広がる幻想的な美しさやミステリアスな魅力がSNSで大反響を呼んだ。

 ヒロインの少女・ライラは、ある日森の中でロウソク頭の悪魔に出くわす。人肉をバリバリ食らう悪魔を見ても悲鳴ひとつあげず、彼女はただぼそりとこう言った。「…あなたの火きれいだね」。少女の思わぬ一言に悪魔はあわあわと動揺し、挙句にこう申し出る。「え…? 好き… 僕と契約して?」。かくして、奇妙な関係性が幕を開けたのだった。

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 注目すべきは、残虐な悪魔・キャンドルの内面に秘められた驚くべき慈愛深さだろう。ライラがひどい虐待を受け、これまでずっと人間らしい暮らしをしてこなかったことを知ったキャンドルは、彼女に十分な食べ物と居場所を与え、彼お手製の衣服を着せた。「ねぇねぇリトルマム? もう震えなくていいし隠れなくてもいいんだよ?」。

 人間を捕らえてその肉をバリバリ食らうくせに、保護した少女ライラに彼が向けるまなざしは驚くほど優しく、まるで我が子を守る母親のように温かい。ライラを“リトルマム”と呼んで慈しむその姿は、もはや悪魔というより慈悲深い神父のようである。泣く子も黙る恐ろしい悪魔の存在は、少女にとって、長い間忘れていた愛情の温もりそのものだったのだ。

 さらに、ライラが生まれ持つ特殊な能力や、それを狙う存在についてもしだいに明らかになっていく。ライラを害する者に一切の容赦はしないキャンドルの強烈かつ独占的な情熱は、まさしく偏愛と呼ぶにふさわしい。

 ファンタジーの世界において、純粋な愛の力は時に血統や種族、善悪の境界すらも軽々と乗り越える。ふたりが育む、究極の愛情の結末をどうか見届けてほしい。異種間恋愛ものに目がない人にはぜひ読んでほしい一作だ。

文=ネゴト / 糸野旬

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