デュエル構成・彦久保雅博と振り返る  オトナも虜にするアニメ「遊☆戯☆王」の世界。その魅力を徹底解剖 【後編】 

アニメ

公開日:2025/3/9

『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ 』00~04年放送

千年パズルを巡るシリーズの原点

 ゲーム好きの少年・武藤遊戯が完成させた千年パズルの中に封じられていた人格、闇遊戯。もう一つの魂として宿った闇遊戯とともに、遊戯は千年アイテムや神のカードにまつわるデュエルへ身を投じていく。そのデュエルの中で出会った仲間と、ライバル・海馬瀬人とともに、失われた闇遊戯の記憶と真の名を取り戻すことはできるのか……?

 記念すべきシリーズ第1作。高橋和希さんによるマンガを原作に、作中のカードゲームを再現したトレーディングカードゲームが既に発売されていたため、そのルールに則ってデュエル展開をアレンジ。カードゲームに特化した物語構成となった。放送されるや否や、アニメも爆発的な人気を獲得。特に北米市場では劇場映画『光のピラミッド』が公開されるほど(当時の北米で公開された日本アニメ映画としては歴代3位の興行収入を記録/日本未公開)。その後、シリーズが続いていく礎を築いた記念碑的作品だ。アニメーション制作は本作から『VRAINS』までをぎゃろっぷが手掛ける。

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【彦久保COMMENT】
 とにかく原作とカードゲームの差を埋めながらデュエルの内容を考えていった作品です。後々のお話にも影響してしまうのでオリジナルのモンスターをデザインできない状態でしたが、より魅力的に見えるようにするためにはどうしたらいいのか、いろいろ意見を出した覚えがあります。元のモンスターからの変化をわかりやすくするために、装備魔法にしたり、ビジュアルを変化させたりと、できるだけ視覚的に表せる範囲で収めています。

『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ GX』04~08年放送

デュエル・アカデミアで、学園デュエル!

 デュエリスト養成学校・デュエル・アカデミアに通うこととなった少年・遊城十代は、最強のデュエリストである武藤遊戯から精霊が宿るカードを譲り受ける。そのカードに宿っていたハネクリボーを相棒として、エリート主義の同級生・万丈目準をはじめとした学内外のライバルと十代はデュエルを繰り返していく。

 シリーズ第2作にして、オリジナルアニメとしては1作目となる『GX』。前作から世界観は引き継ぎつつも、新たな舞台となるデュエル・アカデミアを中心に、学園ものという新たな切り口で物語が作られた。「ガッチャ」という明るい掛け声とは裏腹に、回を経るごとにシリアスな展開が頻出。子どもから大人になるその過程をデュエルとともにしっかりと描ききった。十代が使ったカード、ハネクリボーとE・HEROも人気を博した。監督は『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-維新志士への鎮魂歌』の辻初樹。2025年4月からはリマスター版『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX 20th Remaster』の放送が開始されるシリーズ屈指の人気作だ。

【彦久保COMMENT】
『GX』といえば、十代が使うE・HERO、という人も少なくないと思います。水戸黄門の印籠じゃないですけど、新たな融合モンスターの召喚に上手くハマったなと感じていて。ドローしてエースカードを引いてくれ! と手に汗握りながら観てくださったなら、これ以上に嬉しいことはありません。融合召喚とE・HERO、どちらかの存在が欠けていたら、外連味のある展開をしっかり描けなかったかもしれませんね。

『遊☆戯☆王 5D’s』08~11年放送

バイク型デュエルディスクで、ライディング・デュエル!

 未来都市・ネオ童実野シティを訪れた青年・不動遊星は、自身の出生の秘密が絡んだ、世界の命運を揺さぶる事件へと身を投じていく。本作は、D・ホイールと呼ばれるバイク型デュエルディスクで繰り広げられる新システム「ライディング・デュエル」が導入されたことでも話題に。

【彦久保COMMENT】
 ライディング・デュエルは高橋先生のビジュアルイメージを受けての発案でした。しかし、先生が「魔法じゃないんだよ、スピードこそが魔法なんだよ」と呟いたことで一転。魔法カードをほとんど使わない独自のデュエルスタイルになりました。

『遊☆戯☆王 ZEXAL』11~14年放送

世界観を一新した新機軸の異世界もの

 デュエルチャンピオンを目指す少年・九十九遊馬が、様々な世界を行き交いながらデュエルを繰り広げる冒険譚。異世界からやってきた生命体・アストラルの記憶の欠片である「No.(ナンバーズ)」を軸に、シャークこと神代凌牙や天城カイトなど、強いライバルたちと戦っていく。

【彦久保COMMENT】
『ZEXAL』は子どもをシリーズに取り込みたい狙いもあり、ガガガシリーズやドドドシリーズといったキャッチーなオノマトペのモンスターを登場させました。それと同時に、ナンバーズが登場することを意識して、数字に意味を込めながらデュエルの展開を考えています。

『遊☆戯☆王 ARC-V』14~17年放送

他次元を巻き込んだ壮大なデュエル

 父に憧れてプロのエンタメ・デュエリストを目指す少年・榊遊矢が別次元から訪れた少年・ユートと出会ったことで始まる物語。「スタンダード次元」「エクシーズ次元」「シンクロ次元」「融合次元」など四つの次元を巻き込み、歴代シリーズのキャラクターも登場する展開が描かれる。

【彦久保COMMENT】
 パラレルの次元ごとに召喚方法が異なるという設定でデュエルを考えた作品です。とにかく設定が膨大にあるので、ペンデュラム数値やステータスを活かしながら流れを組み立てていきました。昔のモンスターをリニューアルさせて出すのも楽しかったですね。

『遊☆戯☆王 VRAINS』17~19年放送

VR空間で繰り広げられるSFバトル

 VR空間「LINK VRAINS」に現れたハノイの騎士は、ネットワークのどこかに存在するという「AIたちの世界」の破壊を目論むハッカー集団。その野望を食い止めるべく、「Playmaker」こと高校生・藤木遊作が動き出す。シリーズ第6作は仮想現実の世界と人工知能をテーマにした意欲作。

【彦久保COMMENT】
 『VRAINS』のデュエルは「矢印の方向にモンスターを召喚していいよ」という風に、デュエルの内容が高次元化していきました。エクストラリンクやゼロリンクといったシステムもサプライズ的に入れながら、とにかく頭を捻った思い出のある作品です。

『遊☆戯☆王 SEVENS』20~22年放送

明るく楽しく、 新ルールでラッシュデュエル!

 大人たちが管理するデュエルに息苦しさを覚えている小学5年生・王道遊我は、新たなルールを自ら開発する。しかし、彼らの前にデュエルの全てを管理しようとする大人が現れ……!? スタッフが一新されたほか、ルールも変更。シリーズで初めて小学生を主人公に描いた新機軸の作品となった。

【彦久保COMMENT】
『SEVENS』ではデュエルのルールがこれまでのものから、ラッシュデュエルのものに変わりました。手札が5枚になるまでドローできるので、手札がゼロになるまで使い切る方が次のターンはより引けるようになる。なので、贅沢に手札を使った展開がこの作品の見どころです。

『遊☆戯☆王ゴーラッシュ!! 』22~25年放送

主人公は宇宙人!? ついに闘いの舞台は宇宙へ

 双子の兄妹・王道遊飛と遊歩は、宇宙人トラブル相談所を営む小学生。ある日彼らは、遥か彼方にあるベルギャー星団からやってきた宇宙人、ユウディアス・ベルギャーと出会う。そして3人は、ラッシュデュエルによる異星間交流を行い――!? シリーズ最新作は、舞台が宇宙規模にまで展開された。

【彦久保COMMENT】
 ギャラクシー族という新種族が登場しましたが、主人公はそのルールを知らない設定でスタートしました。なので、最初はなるべく効果を使わずにデュエルを構成しています。ただ、話数を重ねるにつれてどんどん展開が早くなっていって……。とにかくネタを次から次に足していきました。

これからも続く『遊☆戯☆王』

 25周年を迎えた「遊☆戯☆王」シリーズ、今後もさらなる展開に期待が高まる。4月からはシリーズ屈指の人気作『GX』のリマスター版『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX 20th Remaster』の放送が決定。また、25周年を祝して、7月には東京・立川ステージガーデンにてライブイベント「25th Duelist Live Kingdom」が開催予定だ。歴代シリーズのアーティスト&『DM』出演キャストが集結するこのイベントは、ファンにとってまさに夢の舞台となるだろう。

 そして、今のデュエルシーンを牽引するカードゲーム『ラッシュデュエル』の動きも見逃せない。初心者でも直感的に楽しめる新ルールが生まれたことで、次々とデュエリストが増えているからだ。ラッシュデュエルの新展開に注目したい!

取材・文=太田祥暉

©スタジオ・ダイス/集英社・テレビ東京・KONAMI

©高橋和希 スタジオ・ダイス/集英社

原作本『遊☆戯☆王』(全22巻)
高橋和希 集英社文庫 946〜1089円(税込)
気弱でいじめられっ子の高校生・武藤遊戯が、今世紀初頭の発見以来、誰も完成させる事ができなかった『千年パズル』を解いたことで、もう一つの人格を宿す。今なお色褪せることのない「原初のデュエル」の数々がここに!

▶前編:声優・津田健次郎さんインタビューはこちら

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