京都の老舗喫茶店、大阪のレトロモダンな図書館…着物好き乙女が巡る関西旅『恋せよキモノ乙女』【書評】

マンガ

公開日:2025/3/15

©️『恋せよキモノ乙女』山崎零/新潮社

 何か新しい趣味や日々のときめきを求めている人に『恋せよキモノ乙女』(山崎零:著、コバヤシクミ:監修/新潮社)をオススメしたい。着物女子のまっすぐな恋と、真似したくなるようなおしゃれな着こなしをギュッと詰め込んだ作品だ。着物好きな作者ならではの細部までこだわった忠実な描写に、思わず着物を着てみたくなるはず。

 野々村ももは受付嬢をしながら大阪で家族と暮らしている女の子。彼女の楽しみは、亡くなった祖母から受け継いだ着物を着ておでかけすることだ。関西のあちこちに出かける中で、ある日京都の喫茶店で素敵な男性・椎名さんに出会い恋をする。恋愛経験のないピュアな彼女の恋路はゆっくりと進んでいく。初めて一緒に食事をするまでにも時間がかかる、じれったい二人の関係には思わずキュンとしてしまう。

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 京都、大阪、琵琶湖や奈良公園など、実在する日本の街や名所を舞台に物語がすすむ。登場する神社や喫茶店はどれも風情があり、旅心をくすぐられる。

 ももにとって着物とは幼少期からの憧れであり、亡き祖母との大切な思い出だ。お出かけ前には、祖母の遺した箪笥から出かける場所や季節・天気に合わせて着物の柄はもちろん帯や帯締めなどのコーディネートを考える。湖に行く日は爽やかな装い、図書館に行く日は本の帯、雨の日は紫陽花の帯留…とバリエーション豊か。なによりもかわいらしい着こなしに、心が奪われてしまう。着物スタイリストによる解説やおすすめのコーディネートも紹介されており、着物初心者にも参考にしやすい。

 ももにとって、着物に着替えることは「普段とは違う自分になる儀式のような時間」だという。これは、着物に限らず、旅や趣味にも通じる感覚ではないだろうか。忙しい日々の中では、自分のための時間を大切にすることが心の豊かさにつながる。だからこそ、大好きな着物を愛し、周りの人と分かち合うももの姿が、とても美しく感じられる。素敵な彼女の恋が成就してほしいと願わずにはいられない。

文=ネゴト / fumi

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