少年サンデー編集長「ジャンプにめちゃくちゃ勝ちたい」。出版不況の時代を生き残る“サンデーならではの魅力”【大嶋一範インタビュー 後編】

マンガ

更新日:2025/3/20

愛すべき「原稿料」というシステム

ーーサンデーから少し視点を広げて、業界全体のお話も少し聞かせてください。雑誌の発行部数は長年、減少傾向にありますが、漫画雑誌はこれからどのようになっていくと思いますか?

大嶋:部数低減は世の中の流れ的にやむを得ないというか、雑誌が、その文化を好きな方のためのものになっていくのは間違いないと思っています。一方、アメリカではいま、電子版が苦戦してるんですよね。紙のコミックスが9割、電子が1割の売り上げです。何故そうなんだろう?と現地出版社さんにも聞いたのですが、漫画の単行本は「コレクションアイテム」であり「画集」だ、という扱いだからなんですよ。僕はこれ、本質的だと思っていて。漫画家さんって「画家」なんですよね。

ーーああ、なるほど。絵画を描く画家さん。

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大嶋:だからゴッホみたいに、自分が現役でないタイミングで評価をされるかもしれないし、原画には凄まじい価値がつくかもしれない。と考えると、雑誌はパンフレットみたいなものになるはずで、パンフレットをどのようにユーザーさんに楽しんでいただきながら頒布していくのかを考えることが、紙の雑誌が生き残る道かなと思っています。

ーー原画が海外に流出、みたいな話もよく聞きますよね。

大嶋:そうですね。ただ、ここは難しいところで、漫画と原画の価値はイコールとは言えないんですよ。少なくとも日本の出版業界では、原画はあくまでも漫画を生むための中間制作物で、本の形になってはじめて価値が生まれると。そのために「原稿料」というシステムがあります。少なくともサンデーにおいては、ドラスティックに「新人さんの原稿は5円ね、大御所先生は30万円です」ということは絶対にしません。それじゃあ次の人気作家は生まれないよね、と漫画の黎明期に誰かが考えて「原稿料」というエコシステムが生まれたのだと思うんです。将来、凄い作品を描いて、多くの人の心を動かすかもしれない新人さんが業界に参入して原稿料で生活していける、すごく大切な文化だなと思っています。僕はこの漫画雑誌の文化を愛しているんです。

ーーめちゃくちゃ面白いお話です。多少の差はあれど1ページ単価の決まった原稿料があって、高橋留美子先生の作品も『コナン』も、新人さんの作品も並んで載っていると。よく考えるとすごいことですよね。

大嶋:すべての漫画家さんが同じ指標で人気アンケートを取り、毎週フィードバックされるという。新人さんが憧れの漫画家と同じ誌面に載るとか、その中でのランキングを聞かされるとか、そういったなかで自分の進むべき道が見えてくる面もあると思うんです。これは漫画家さんが雑誌連載するメリットのひとつだと思います。

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