少年サンデー編集長「ジャンプにめちゃくちゃ勝ちたい」。出版不況の時代を生き残る“サンデーならではの魅力”【大嶋一範インタビュー 後編】
更新日:2025/3/20
「めくり」の面白さ
ーーちなみに、エンターテインメント業界全体で見ると「漫画誌の競合は他社ではなくYouTubeやTikTok」とも言われています。可処分時間の奪い合いが叫ばれるなかで、漫画というコンテンツはどうなっていくと思われますか?
大嶋:可処分時間の奪い合いというのはその通りなのですが、動画に全て持っていかれて漫画が廃れることはないだろうと考えています。僕は漫画の面白さって「めくり」にあると思っているんです。
ーー自分でページをめくる面白さ、ということでしょうか。
大嶋:そうですね、読者が能動的であるというのも動画との違いです。あとは、漫画って基本的に非連続的なんですよ。コマとコマ、ページとページが飛んでいるので、その隙間を脳内で補完するんです。漫画を自分でめくって、行間からいろいろ考えたりするのは、動画を見るのとはまったく違う心的体験だと思っていますね。
あきらめない者が勝つようにできている
ーー最後に、サンデー編集長として今後の目標などを教えてください。
大嶋:前サンデー編集長の市原武法が「編集長は目先のことをやっていてはダメだ」と話していたことがあったのですが、これは本当にその通りだなと思っていて。サンデーが10年20年後も戦えるように、いま戦うのが僕の役割なので、長期間、漫画作品を送り出す組織を作っていきたい。世の中ってあきらめない者が勝つようにできているなと思っていて、なんとか倒れずに立ち続けられるようにしたいなと。
ーーチームリーダーとして求められるものが多いと思いますが、編集者一個人としてはいかがですか?
大嶋:小学生の娘が2人いるのですが、いま、僕がコロコロのときに担当していた漫画を面白い面白いと言って読んでいるんです。当時、必ずしも評価が得られなかったものもあるのですが、これが自分の仕事の本質だと思っていて。「少なくとも、自分にとっては間違いなく面白い。きっと誰かにとっても面白い。これは載せたほうがいい、出版したほうがいい」と思える作品をしっかり世の中に送り出す。そのポリシーだけは今後もブラさないようにしていきたいですね。
ーー「自分が面白いと思えるものを」というお話は本日、何度も登場しました。ここが大嶋さんのベースにあるのだなと思いました。
大嶋:というか、この基準がないとグラついてしまうんですよね。「明日『鬼滅の刃』みたいに爆売する作品を作れ」と言われても、確実に作れるわけじゃない。でも自分が面白いと信じていることをコツコツと積み上げて、それが時代と噛み合えば結果が出ると信じてやるしかない。だからサンデー編集部は、自身の「面白い」を信じている人がどんどん挑戦できる環境にしていきたいんです。
ーーありがとうございます。これからのサンデーと大嶋さんのご活躍を楽しみにしております。本日は長時間ありがとうございました。
大嶋:ありがとうございました!

取材・文=金沢俊吾、撮影=干川修
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