ある日突然、街が黒い霧と化け物に襲われて――!? 大切な人を探しながら戦い続ける、異能力を手にした少女たちの物語!【書評】
PR 公開日:2025/3/7

生きていると何かと値踏みされ、他人や家族と自分を比較される。そうした中で自分の能力が足りない現実に直面すると、どろりとした負の感情が溜まってしまうこともある。特に人が当たり前にできることができないというのは、自分が欠陥品だと言われているようで劣等感を抱いてしまいがちだ。
『逆襲のマスクガールズ』(ロコヰ:漫画、KitajimaK:原作、Satoshi Furuhashi:原案/イマジカインフォス)は、「烈氷の才女」と言われている主人公が近未来の地球で人を襲う謎の生命体と戦いながら、失踪した魔法不全者の兄を探し求めるファンタジー作品。現在、コミックシーモアで先行配信されている。
本作は、誰もが魔法を使えるのが当たり前だった近未来の地球が舞台。しかしある日、突然街が霧で覆われ、「ミュータント」と呼ばれる化け物たちが人間を襲い始めた。

学校からの帰宅中だった主人公・レイは慌てて父親の研究所へ向かうが、両親はすでに、無惨に殺されていた。しかしそこで、謎のマスクから「装着セヨ レイ」という声が聞こえてくる。家族を救えなかった弱い自分への怒りに満ちていたレイは、衝動的にそのマスクを手に取り身につけた。そしてそこからミュータントへと立ち向かう生活が始まっていく。


家族を殺され、兄は行方不明のまま。状況も分からず味方もいない。そんな中でただ一人戦っていたレイだが、あるときフェイという同士に出会う。


彼女もまた、ミュータントと戦いながら誰か大切な人を探していた。レイはフェイの家へ招かれ、オムレツとケーキをご馳走になっていたが――そこでミュータントが出現し、フェイはレイをかばって負傷してしまう。そんな彼女を見て、レイは自分もフェイのように「ただひたすらに目の前の人を救える人」になりたいと強く思い始める。こうして戦う仲間を手に入れたレイだったが、マスクを身につけている同士でも味方とは限らないようで――!?
ふたりがいる黒い霧に満ちた街は、現在「コープス」と「カースト」という大きな二大組織に支配されている。そして街の“外”から来たという少女によると、この場所は「悪魔の揺り籠」と呼ばれ、「人の形をした怪物と仮面をつけた異能者が蔓延る混沌の街」と恐れられているらしい。つまり、マスクをつけて戦っているレイたちも危険な存在として認識されていたのだ。


ただ、襲い掛かってくる化け物と戦っていただけなのに、いったいどういうことなのか。そしてふたりが装着しているマスクは何なのか。ミュータントはいったいどうやって発生しているのか。読めば読むほど新たな事実が発覚し、そこから謎が浮上して、どんどん物語の世界へ引き込まれてしまう。
さらに、第4話では、レイと兄の過去が描かれる。魔法が必須の世界で、魔法不全者である兄は、周囲から蔑まれ、虐げられていた。レイは元々、兄とは違って能力では「恵まれた方」の人間だった。本来ならそれは誇りに思うこと、自信の源で、長所として胸を張れることのはずだ。だが兄との比較に使われ、結果として兄を傷つける要因になってしまったその力に、レイは何を思っていたのだろう? そして、どんな思いで兄を探しているのだろう? 第4話のいじめから兄を守った能力が彼の心を傷つけてしまうシーンに、ある種の人間らしさを感じ、筆者自身もいろいろと考えさせられた。


この世界の全貌はまだまだ明らかにされていないが、公式ページでは、「不思議な力を手に入れて霧のなかのモンスターたちと戦う道を選んだレイは、やがて4人の仲間を見つけて地球を守る最後の戦いに挑む」と紹介されている。ここからどんな仲間が登場し、どんな戦いが巻き起こっていくのだろう? レイと兄、フェイと探し人との関係も含めて、ぜひとも最後まで見守りたい。
文=月乃雫