米津玄師・つるまいかだ『メダリスト』で描かれる「親子の庇護と自立」を語る。「手を放す」というフレーズに込めた“強さと温かさ”【「BOW AND ARROW」インタビュー】

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公開日:2025/3/8

周りになじめない自分

ーー第1話では、いのりが学校に馴染めない様子が描かれています。これもご自身の投影なのでしょうか?

つるま:そうですね。私は「他の人のようにできなかった」という劣等感がすごくあって。たくさんの人が助けてくれて今があるけど、本当は自分一人でここまでやらないといけなかったのでないか。そのリベンジする機会はもうない…という状態なので、そういう気持ちがいのりに詰まってしまっているなと思います。

 キャラクターは読者の皆様のものなので、作者を反映しすぎたくないとは思うのですが、いのりにはそういう気持ちが強いです。

ーー米津さんも過去のインタビューで「海水魚のなかに淡水魚が一人いるみたいな、自分は何かが間違っているんだろうなという感覚が強くあった」と話されていました。初期のいのりに共感する面がありますか?

米津:そうですね、共感する面は多分にあります。ただ、いのりちゃんほど、ちゃんとしてなかったと思います。本当にぼんやり生きていたなと思うし、何となくぼんやりずっと居心地悪いなと思いながら、見よう見まねで生きていくというか。

 親や周囲の大人に直接的にも間接的にも、いろいろな地域コミュニティを媒介して支えられてきたというのは間違いないんです。でも、個人的な部分を共有できるような大人が、ほとんどいなかった。だから、いのりちゃんを見ていると「うらやましいな」と思う部分もあったりするんですよね。司がちゃんと目の前に現れて、お互いがお互いのことを大事に思えていて。

これからも私自身を好きになる努力はし続けないといけない

ーー先ほどつるま先生は「過去をリベンジする機会はもうない」と仰っていましたが、米津さんはそういう感覚はありますか。そこはもう癒やせない、というような。

米津:もうそれは本当にありますね。30歳を超えて、より一層思うようになりました。「ああ、結局自分はこういう感じなのだよな」という。後ろから過去か未来か、もう1人の自分がぽんと肩をたたいてくるんです。「おまえ頑張ったな、でもおまえはおまえだよと」言ってくる感じがすごくあります。

ーー米津さんは音楽がたくさんの方に聴かれていて、つるま先生も『メダリスト』が大ヒットとなり、成功することで「あの過去があったから良かった」というような肯定ができるかなと他人事ながらに思うのですが、そういったことはないですか?

つるま:私は、そういったことはできないんだと気が付きました。漫画家になることがずっと夢だったし、アニメ化も憧れだったけれども、それが叶った時に私のダメなところがすべて肯定できるわけではないのだとわかりました。

 でも、夢が叶う前はそうなると信じていたんですよね。「漫画家になってアニメ化したら、もう私は完璧な人間になれるのではないか。すべてを帳消しにできるのではないか」と思っていたのですが、実際になってみたら、私自身は変わらないということに気付いて。私はこれからも私自身を好きになる努力はし続けないといけない、人生はその旅なのだな、と気付きました。

米津:本当にそうです。まさに。全く同じ。

つるま:でも、私が米津さんだったら、こんなに世界中の人に愛されていたら舞い上がってしまうのではないかと思うんです。米津さんはそうならず、どっしりと自分を見つめられるのはすごいなと本当に思います。

米津:子供の頃の自分からすると、まさかこのようなことになるとは本当に思っていなかったし、これは非常に幸運なことだなと思います。聴いてくれる人がたくさんいて、そういう関係性があるというのはありがたいけれども、最終的にはあなたはあなたであってわたしはわたしだよな、という気持ちがあるというか。もちろん、聴いてくれた人からほめてもらったらうれしいし、けなされたら悲しいけれども。

 わたしはわたしの大事にするものがあって、あなたたちも一人ひとり、積み重ねた生活があって。そのうちのちょうどあるベクトルがピッと重なった瞬間につながり合うわけじゃないですか。この状態がずっと保ち続けられるわけでもないし、このベクトル自体も生きていけば変わっていくので。それこそ、ハチの頃から好きで、今もずっと聴いてくれている人はそんなに多くないんじゃないかと思いますし。

ーーいちどは離れた人も、また時間が経てばベクトルが重なることがあるかもしれないわけですよね。

米津:そうですね。各々のベクトルがあって、それが重なったり離れたりしながら好きなようにやっていけばいいんじゃないかな。あまり興味なくなったなと思ったら離れてくれて構わないし、もしかしたらいつか気が変わって「また聴いてみようかな」となる瞬間もあるかもしれない。そのときがもしきたらよろしくね、と、そういう感じで活動できたらいいなと思っています。

ーー本日は素敵なお話をありがとうございました。『メダリスト』の今後と、お二人のご活躍を楽しみにしております!

米津つるま:ありがとうございました!

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取材・文=金沢俊吾

「BOW AND ARROW」ジャケット/画:米津玄師

 

TVアニメ『メダリスト』

<放送情報>
2025年1月4日より毎週土曜深夜1時30分~
テレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠で好評放送中!
CSテレ朝チャンネル1 毎週日曜夜9時00分~
BS朝日 毎週月曜夜11時24分~

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ディズニープラス「スター」にて単独最速配信中!
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TVアニメ『メダリスト』公式サイト https://medalist-pr.com/
TVアニメ『メダリスト』公式X  https://x.com/medalist_PR
TVアニメ『メダリスト』公式YouTube https://www.youtube.com/@medalist_PR

©つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会
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