魔王の力のより綺麗にすることが禁じられた!掃除好き女子高生の異世界大掃除ファンタジー【書評】

マンガ

公開日:2025/3/24

 異世界ものは、壮大なスケールと非日常の世界観を楽しめることから、漫画ファンに大人気のジャンルのひとつ。魔法や特殊能力といった非日常に満ちた異世界だが、意外と現代社会の知識や価値観が活かされる場面も多い。

魔王陛下のお掃除係』(我鳥彩子:原作、梶山ミカ:漫画/秋田書店)は、現代の女子高生が自身の能力を活かして見知らぬ世界で大活躍する異色の異世界ファンタジーだ。

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 主人公・さくらは、三度の飯より掃除が好きな女子高生。掃除好きが高じて清掃ボランティアに精力的に参加し、効果的な洗剤を自作する。さらに清掃技術を極めるべく、掃除に関する本を片っ端から読破するほど熱中していた。彼女にとって掃除はただの家事ではなく、もはや生きがいなのだ。

 そんなある日、さくらは図書室で“謎の黒い手”に襲われ、異世界へ飛ばされてしまう。辿り着いた先は、イケメン魔王が治める魔王領だった。しかし、この世界は魔女の呪いで“綺麗にする魔法”が封じられ、そこかしこが埃まみれの汚れ放題。居ても立っても居られないさくらは、即座に大掃除を開始する。呪いを意に介さず汚れを落とす姿が認められ、彼女はなんと“お掃除聖女”として迎え入れられるのだが――。

 本作の見どころは、主人公・さくらが現実世界で日々磨いてきた豊富な掃除スキル。それが驚異的な能力として異世界の人々に歓迎される様は爽快だ。自信と誇りを持って掃除に取り組む彼女の姿は、まるで水を得た魚のように生き生きとして美しい。

 誰もが見過ごす小さな汚れにも目ざとく気づき、辺りがピカピカになるまで誠実に向き合うさくら。そんな彼女の姿勢は、場所だけでなく、人々の心まで浄化する不思議なパワーを感じさせる。

 さくらの行動や考え方に触れるうちに、あらためて自分の生活空間を見直し、綺麗に片付けたいという気持ちが自然と湧いてくるはずだ。異世界ファンタジー好きはもちろん、掃除を通じて前向きな気持ちになりたい人にもぴったりの作品だ。

文=ネゴト / 糸野旬

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