ついに完結の『正反対な君と僕』。TVアニメを控える本作の魅力は?【書評】

マンガ

PR 更新日:2025/3/14

正反対な君と僕阿賀沢紅茶/集英社

 読むたびに胸がいっぱいになっていた『正反対な君と僕』(阿賀沢紅茶/集英社)だが、昨年11月に最終回を迎え、この3月4日には最終巻となる単行本第8巻が発売された。改めて1巻から読み返してみたところ、まんまと最終巻までぶっ通しで読んでしまった。本作をまだ読んだことのない方にオススメ&イッキ読みを推奨するには最高のタイミングだと思い、本作の魅力を紹介することにする。

『正反対な君と僕』は、社交的でノリよく生きるが、実は人目が気になってしょうがない鈴木さんと、物静かだけれど自分の意見はハッキリと伝える谷くんの交際からスタートする物語。連載初期は鈴木さんと谷くんのやりとりがメインだったけれど、次第に彼らの友人たちにスポットを当てたエピソードも増えていき群像劇の様相を呈し始める。

 タイトルと鈴木さん・谷くんのビジュアルを見て「ギャップのある恋人のすれ違いや、そこから生まれるトラブルの話なんでしょ」とお思いの方、それもある! それもあるし、それもめちゃくちゃ楽しいのだけれど、本作最大の魅力はそこではない。私の思う『正反対な君と僕』の一番の魅力は、キャラクターのひとりひとりの誠実さだ。

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 彼、彼女らは、相手の気持ちに誠実に応えようとするのはもちろんのこと、自分の中に沸き立った感情にもきちんと向かい合って、悩んで、そして前に進んでいく。他人に対してだけでなく、自分自身にも誠実であろうとする様子があまりにも眩しくて、愛おしくて、ページをめくるたびに彼らのことがどんどん好きになっていく。うまくいくことばかりでなく、ときには失敗したり、傷ついたり――そんなところからも彼らに親しみを感じていた。

 タイパ、コスパという言葉が一般的になって随分経つ。他人の決めた価値観、ルールに従って、効率よく価値を積み上げていくことが良しとされる世の中において、本作で描かれているような「誠実さ」というのは、急激に失われていっているように思う。

 人間関係や自分の気持ちすら類型化、マニュアル化されネットで正解が簡単に手に入る世の中で、事あるごとに立ち止まり、自分と向かい合うことは「非効率」とも呼べるだろう。でも自分と相手の気持ちを確かめながら積み上げていった日々は、紛れもなく鈴木さん、谷くんたちのものだ。私も彼らのように誠実に生きてみたい――そんな彼らに対する憧れと尊敬が、『正反対な君と僕』がたくさんの読者から支持されている理由じゃないだろうか。

 本作は、鈴木さん、谷くんたちの高校卒業をもって最終回となった。彼らのその後はもちろん気になるのだけれど「まぁ谷くんたちなら大丈夫でしょ!」という安心感があり、不思議とさみしさはない。そんなところも本作の魅力のひとつだろう。とはいえ東京では3月14日から30日まで、大阪では4月11日から27日まで『正反対な君と僕』初となる原画展が開催。26年1月放送予定でTVアニメ化企画も進行中なので、これからも鈴木さん、谷くんたちに会える機会はまだまだありそうだ。

文=籠生堅太(yomina-hare)

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