もし、“推し”の劇団の運営に携わることになったら…? 聡明女学生×御曹司の大正ロマンあふれる恋物語【書評】

PR 公開日:2025/3/18

 もし、“推し”の劇団の運営に携わることになったとしたら、あなたならどうするだろうか。“推し”のために何をしようかと考えるだけで心躍るのは私だけではないはずだ。

 そんな夢にまでみた設定のコミックが『帝都はいから婚物語』(綾城まめ:漫画、来栖千依:原作/イマジカインフォス)。ポプラ社小説新人賞ピュアフル部門賞受賞の大人気作品のコミカライズ版だ。

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 時は大正、東京・浅草。父親が経営する女学校に通う、観劇が好きな女学生・萩原杏は、看板に惹かれて入った「帝華歌劇団」のお芝居に心奪われた。特に目をひいたのは、トップスターの神坂真琴という美青年。そんなある日、杏は、骨董好きの父親がつくった借金のカタに、華族の神楽坂子爵家、次男・真との縁談を進められそうになる。真の顔は、神坂真琴とまるで同じ。だが、真は「人違いだ」と言う上に、「形式的に縁組みはするがお前を愛するつもりはない」「子供が産める健康な体を持つ女であれば誰でもいい」と暴言を吐き、杏も思わず言い返して、縁談は破談になってしまう。しかし、杏の「将来、男と肩を並べて働きたい」という言葉を聞いた当主・空太郎は、杏を「帝華歌劇団」の支配人に任命する。とはいえ、「帝華歌劇団」は火の車。経営難にあえぐ、少年男子ばかりの劇団に紅一点、しかも、支配人として運営に携わることになった杏はどうやって、この歌劇団を立て直すのか。

 小説版でも大正時代ならではの華やかな雰囲気に惹きつけられたが、コミカライズ版はその世界をますます美しく彩る。冒頭の「帝華歌劇団」の舞台シーンからウットリとした気分に。杏がはじめて団員たちに会う場面も、西欧の建築家を招いて設計したというモダンな建物も相まって、団員たちのあまりの可憐さに、思わず息を飲むほどだ。

 それに、杏が可愛いのなんのって! 濃やかに描きこまれた袴姿・着物姿は華やかで、なんとも愛らしい。だが、杏の魅力は可愛さだけではない。暴言を吐く真に言い返す場面では、杏の威勢の良さがこちらにまで迫ってくる。その真っ直ぐな切り返し、言い返した言葉から漂う杏の温かさには、私たちもハッと驚かされる。それに、杏はかなり聡明な女の子。ちょっとしたトラブルが発生した際にも、あっという間に解決してしまう。当主・空太郎が杏に「帝華歌劇団」を任せてみたいと思ったのも納得。頑張る女の子の物語はそれだけで魅力的だが、利発的な杏がどんなアイデアで劇団を救っていくのかと思うと、ワクワクが止まらない。

 杏は、ひらめきと度胸で歌劇団にまつわる事件を次々と解決していく。そうするうちに、最初は最悪だった真との関係も変わっていき……。聡明女学生と御曹司の恋は、どうなってしまうの!? 頑張る女の子の奮闘譚としても、ジレジレがクセになるラブストーリーとしても、そして、ミステリーとしても面白い。大正ロマンあふれるドキドキワクワクのコミックに、あなたも魅せられること間違いなし!

文=アサトーミナミ

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