同じ顔をした男たちが暮らす“閉鎖的な村”に週刊誌の記者が潜入、暴いてはならない「因習」とは…。村ホラーコミック『いんびりの村 ―顔の同じ男たち―』【書評】

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PR 公開日:2025/3/17

いんびりの村 -顔の同じ男たち-佐藤啓/少年画報社

 閉鎖的な村でおぞましい出来事が次々と起こる“村ホラー”には、独特の怖さがある。本当に日本のどこかには、こんな村があるのではないか…。そう思えてきて、自分の目に見えている“平和な世界”も疑いたくなる。

いんびりの村 ―顔の同じ男たち―』(佐藤啓/少年画報社)は、まさにそうした恐怖をもたらす陰惨な村ホラーだ。

 物語は、週刊誌を手がける編集部に1本のビデオテープが送られてきたことから幕を開ける。収録されていたのは、20年前に放送されていた「ニッポン秘境紀行」という番組だった。ビデオテープには、青森県にある倉里村へ取材に行った女性リポーターが同じ顔をした男たちに襲われる映像が記録されていた。

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 ビデオテープの差出人は不明。まだ知られていない事件の告発映像だ…。記者の芦澤ユウコはそう思い、徹底的に調査すべきと訴える。しかし、同僚はビデオテープに映っていた映像を偽物と笑い飛ばし、真剣に取り合ってくれない。

 そこで、ユウコはひとりで調査をスタート。ビデオテープの送り主を探していたところ、2年前に倉里村から逃げてきた男性と出会う。彼の名前は、ミカモトタイチ。ビデオテープを編集部に送ったのは、タイチだった。

 タイチが明かす倉里村の因習は恐ろしい。村では「ショーグン」と呼ばれる男を中心にカルトが形成されており、村の外に出てはいけないという掟がある。そして、村人は18歳になると「いんびり祭り」という秘祭に参加させられるという。

 タイチの目的は村に置いてきた弟を、18歳になる前に助けること。スクープが欲しいユウコは手を貸すことを約束し、2人は倉里村を訪れる。

 だが、村は廃村のような状態になっていた。そこで2人は村はずれの集落へ。すると目にしたのは、あまりにも衝撃的な光景だった…。

 その集落でユウコは村人に捕まり、絶体絶命のピンチに。一方、タイチは弟を救うという目的を果たすべく、ショーグンと対峙することになるのだが、その先で想像もしなかった絶望を味わう。

 村の秘密を握っているショーグンは甲冑を身に着け、決して素顔を見せない。なぜ、ショーグンは自身の顔を隠すのか。そして、“同じ顔の男たち”を作り出している理由とは…?

 本作はタイチに隠された“ある秘密”が明らかになってから、よりスリリングな展開になっていく。村ホラー作品の醍醐味であるバイオレンスな描写だけでなく、村に隠された謎を解き明かすという主軸が活きているため、サスペンス好きな方も大いに楽しめる。

 血の繋がりだけでは片付けられない、村人たちの“似すぎる顔”に隠された秘密が明らかになる時、あなたはきっと戦慄するだろう。

文=古川諭香

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