みんなが普通にできていることが、私にはできない… 処女のままセックスレスになった妻の苦悩。夫婦関係を見直すきっかけになるコミックエッセイ【書評】
公開日:2025/4/11
日本を取り巻く少子化問題。厚生労働省の調べによると、2024年に日本で生まれた子どもの数は72万988人で、1899年に統計を取り始めて以降、もっとも少ない数字となった。最近の人口減少の要因のひとつとされているのが、セックスレスだ。
付き合いたてや新婚時代は夜の営みが盛んだったのに、いつしか肌に触れることすらなくなった…そんな問題を抱えている人たちは少なくない。本稿ではカップルや夫婦間の悩みを描いた漫画を5作品ご紹介。現状を打破したい人はもちろん、そうでない人もぜひ参考にしてみてほしい。
※本稿では流産の描写を含む作品を紹介しています。あらかじめご了承の上お読みください。
まとめ記事の目次
奥さまは処女
二人目が欲しいけど セックスレスでも妊活できますか?
夫公認彼氏ができました セックスレスにとことん向き合った夫婦の13年レポ
私の穴がうまらない
「君とはもうできない」と言われまして
奥さまは処女

『奥さまは処女』(うなぎ:原作、梅林イクミ:漫画/光文社)は、同名タイトルのブログで人気を博した原作者・うなぎ氏の実体験をコミカライズした作品。タイトルから分かる通り、人生で一度も性行為をしないまま結婚し、そのままセックスレスに陥ってしまった夫婦の妊活を描いたエッセイだ。
うなぎ氏が夫と出会ったのは21歳の時。彼とは遠距離恋愛で、かつ双方とも性に対して消極的なタイプだった。何度か挑戦するも上手くいかなかったという経緯がある。エッセイ内では脳内で「セックスレス解消委員会」を開催して策を練るシーンもあるのだが、なかなか結果には結びつかない。
やがてうなぎ氏は「みんなが普通にできていることが、私にはできないんだ……」と深刻に思い悩ん
でしまい、うつ病を患ってしまう……。
一般にイメージされるセックスレスとは、また違ったケースの悩みを抱えていたうなぎ氏。努力がなかなか実らない様子は胸を苦しくさせるが、最後まで読めばきっと晴れやかな気持ちにさせてくれるはず。もしセックスレスや妊活に悩んで疲弊している人がいたら、ぜひオススメしたい1冊だ。
二人目が欲しいけど セックスレスでも妊活できますか?

セックスレスに陥るきっかけで多いとされているのが、ひとり目を授かったタイミング。『二人目が欲しいけど セックスレスでも妊活できますか?』(まきこんぶ/KADOKAWA)では、出産後に夫を受け入れられなくなってしまった作者・まきこんぶ氏の実体験が描かれていく。
まきこんぶ氏と夫のオタッキー氏は、お惚気が止まらないほどのラブラブカップルだった。やがて念願の第一子を設けて里帰り出産を済ませたのだが、のちに再会した夫へ抱いた感情は嫌悪感だったという。以前は当たり前だった、頭を撫でられるスキンシップやキスも受け入れられなくなってしまったまきこんぶ氏。当然、セックスなんてもってのほかだろう。
しかし、次第にふたり目が欲しいという願望を抱き始めたまきこんぶ氏。そこから妊活をスタートさせるのだが、長かったセックスレスの代償はあまりにも重く――。
同作の大きな特徴は、まきこんぶ氏だけではなくオタッキー氏の様子も描かれていること。似た状況下に置かれている人なら共感できること間違いなしなので、同じジレンマを抱えているという人は要チェックだ。
夫公認彼氏ができました セックスレスにとことん向き合った夫婦の13年レポ

セックスレスの厄介な点は、お互いが共通認識できているか分からないところだろう。たとえ自分が不満を持っていたとしても、相手が同じとは限らない。逆もまた然りである。ではいったいどう向き合うべきなのか、その参考にしてほしいのが『夫公認彼氏ができました セックスレスにとことん向き合った夫婦の13年レポ』(みか・わかぴょん:原作、ハラユキ:漫画/KADOKAWA)だ。
著者である、わかぴょん・みか夫婦は、演劇活動を通して出会った。結婚後も仲睦まじく生活していたのだが、みか氏は夫から性行為を一切求められないことに不安や不満を募らせていく。というのも、わかぴょん氏は性的なことと向き合うことが苦手。妻のことは愛しているのだが、どうしてもする気にはなれないのだ。
それでもお互いに歩み寄り、なんとか子どもを授かったふたり。だが、性行為に対する認識のズレが埋まることはなかった。その果てに生み出されたのが、“夫公認の彼氏”を作るという選択肢。婚外恋愛という劇薬がどのように作用したのか、過程や結末まで描かれているので、一つの参考例として読んでみてはいかがだろうか。
私の穴がうまらない

なんで性欲だけは手持ちの駒(夫)だけで満足しなきゃいけないんでしょうね――。夫婦間のセックスレス問題を描いた作品の中でも、シンプルかつ直球的な心情を描いた『私の穴がうまらない』(おぐらなおみ/KADOKAWA)。同作は、夫と結婚して15年目になる主人公の中井ハルヒが心と身体にぽっかりと開いてしまった“穴”と向き合う様子を描いていく。
ハルヒはフリーの編集マンとして働く42歳の女性で、2歳上の夫との間には中学2年生になる娘がいる。家族仲も夫婦仲も悪くない、はたから見れば充実した生活を送っているのだが、あるとき心身が満たされていないことに気づく。その原因が、夫とのセックスレスだったのだ。
夫婦関係はジェンガと似ていて、ターンが進むと徐々にバランスが歪んでしまう。上手く修正できれば問題ないが、動かしたいバーは得てして難しい場所に置いてあるもの。それを知ってか、ハルヒは夫へ相談できずにモヤモヤを抱え続けてしまい、やがて大きな転機を迎えることに。
同作ではハルヒ夫婦以外にも、彼女の同僚たちが抱える問題が描かれる。レス夫婦が行き着く先は改善か、それとも終焉か……結末が気になる人は同作をチェックしてみよう。
「君とはもうできない」と言われまして

夫婦関係が悪化する大きな原因とされるのが、心身のコミュニケーション不足。夜の営みはないけど心は繋がっているから大丈夫……なんて考えは、もしかすると危険なのかもしれない。そう思わせられるのが、『「君とはもうできない」と言われまして』(モチ:漫画、三松真由美:監修/KADOKAWA)である。
主人公の律子は子どもが小学生になって自立したこともあり、久々に夫と身体を重ねようと声をかけた。ところが「律子とはそういう気になれないんだ」と突っぱねられてしまう。その後もあの手この手で誘惑していくのだが、反応は芳しくない。そこへ夫の浮気疑惑まで浮上してしまい、徐々に自尊心を失っていく。やがて律子自身も“PTA不倫”に巻き込まれそうになり――。
セックスレスが原因で、円満だった夫婦生活に暗雲が立ち込める律子夫婦。自分に魅力がないのか……と思い悩む彼女だったが、夫の抱える悩みが明かされ、状況は一変する。相手を本当の意味で思いやることの大切さ、そんな基本に立ち返るきっかけを与えてくれるかもしれない。
それぞれに事情があり、複雑に絡み合っているセックスレスの悩み。今悩んでいる人も、自分たちは大丈夫だと思っている人たちも今後の参考に手に取ってもらいたい。
文=ハララ書房