失踪した不良のクラスメイトの妹と食い違う意見。彼は本当に悪い人間だったのか?【漫画家インタビュー】
公開日:2025/3/30

自身に関するエッセイや、フォロワーの体験談を基に描いた漫画をブログで発表しているしばたまさん。ゆるかわいいタッチながら人間の本性を鋭く突くような作風が注目を集めている。今作は悪人が嫌いな主人公のある願いから巻き起こる、不可思議な出来事を描く。正義とは? 悪とは? 人間が逃れられない本質に迫る作品を生み出した著者のしばたまさんにお話をうかがった。
暗いニュースを見たくない主人公の森田は、明るいニュースばかりになればと、悪い人がいなくなるよう神社で祈願する。すると、悪いことをしていた人々が次々と失踪する事態に。そんなある日、行方不明になったクラスメイト・西村の妹と会い、西村の人柄について言い争いになる。
人は自分が信じたいものだけを信じるもの
――いじめをしていたクラスメイト・西村の妹と意見の対立が繰り広げられます。実際にSNS上で起こる論争を彷彿とさせますが、そのようなことを意図されたのでしょうか。
意図して描いています。主人公は学校での西村しか知らず、逆に西村の妹はお兄ちゃんとしての西村しか知らない状態で話しています。自分の正義の反対は誰かの正義、というように、自分が知っているものや信じたものしか受け入れられない姿を表現したくて描きました。
――読者からの反応が気になりますが、発表当時の反響は?
正義と悪の概念についてたくさんコメントをいただきました。この討論(?)がコメント欄で繰り広げられたことが一番嬉しかったし、学びになったことです!
――自分が原因かもしれない事態に遭遇した際、主人公のように「自分のせいではない」という思考に陥りがちです。主人公は一貫して自分は悪くないスタンスをとっていますが、この描写に込めた意味は?
一度そうだと決めた行動や思考はなかなか変えられず、「ちょっと良くなかったかも」と思っても今までの自分を否定することになるので後には引けない。そんな姿を表現しました。
暗いニュースが嫌いで、とにかく明るい話題を……と願った主人公の葛藤を描いた本作。悪人がいなくなったら世界はどうなるのか。そもそもどこからが悪といえるのか。ラストまで読むと、そんなことを考えてしまうはずだ。

しばたま
デザイナー&イラストレーター。大人気アイスのパッケージデザインなどを手がける。Instagramでフォロワーさんから体験談を募集し「ゾッとした話」「ほっこりした話」などのマンガを描き、話題に。著書は『1万人がいいね!した 心ゆさぶる本当の話』『身の毛がよだつゾッとした話』。
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