母親失踪の理由を探る中、明らかになった彼女の意外な一面に衝撃が走る【漫画家インタビュー】
公開日:2025/4/1

自身に関するエッセイや、フォロワーの体験談を基に描いた漫画をブログで発表しているしばたまさん。ゆるかわいいタッチながら人間の本性を鋭く突くような作風が注目を集めている。今作は悪人が嫌いな主人公のある願いから巻き起こる、不可思議な出来事を描く。正義とは? 悪とは? 人間が逃れられない本質に迫る作品を生み出した著者のしばたまさんにお話をうかがった。
ネガティブなニュースに嫌気がさしていた主人公・森田は、神社で神様に犯罪者が消えてほしいと祈る。その後、次々と悪い人たちが消えていく不可解な出来事が起き、なぜか自分の母親もいなくなってしまう。母は悪い人ではないと信じる森田は、残された母のスマホを調べてみる。
現実を突きつけられても考えを曲げない主人公
――母親がいなくなった原因を探す過程で、主人公は母親が行っていたアンチコメント投稿を目にします。近年の誹謗中傷や炎上などの問題が念頭にあったのでしょうか?
念頭にありました。誹謗中傷しているアカウントのアイコンがその人の子どもだったり、大事なペットだったり、誰かにはすごく優しくできるのに、他人のことは平気で傷つけるしその自覚もない。しまいには「教えてあげている」などと正義を振りかざしてしまう。そんな人の姿を思い浮かべながら描きました。
――伏線回収に驚いてハッとさせられました。
最初に考えたときはハッピーエンドにしたかったんです。でも考えていくにつれて、このマンガの中の世界の解像度が上がっていき、到底ハッピーエンドなんてできませんでした。「あ~無理なのか創作でも……」と悲しくなりましたね。
――母親への思いと不良のクラスメイトの妹の言い分を比較して主人公は自己嫌悪に陥ります。それでも「悪人は消えるべきなんだ」と言わせたのは?
主人公は自分の神頼みで消えた人たちを、「消えるべき人間が消えたんだ。よかったよかった」と思い続けたので、母親が消えたとしても自分の思想を変えることはできなかったのです。
主人公は極端な思考を肯定し続けている中で、自分の大切な人よりも自分の思考が大事になってしまったとも言えます。
暗いニュースが嫌いで、とにかく明るい話題を……と願った主人公の葛藤を描いた本作。悪人がいなくなったら世界はどうなるのか。そもそもどこからが悪といえるのか。ラストまで読むと、そんなことを考えてしまうはずだ。

しばたま
デザイナー&イラストレーター。大人気アイスのパッケージデザインなどを手がける。Instagramでフォロワーさんから体験談を募集し「ゾッとした話」「ほっこりした話」などのマンガを描き、話題に。著書は『1万人がいいね!した 心ゆさぶる本当の話』『身の毛がよだつゾッとした話』。
Instagram:@shibatamaa
X:@shibatamaaaa