「公務員」だと思ったらぼんくら貧乏陰陽師!? 契約結婚から始まった夫婦の陰陽道物語【書評】

マンガ

公開日:2025/4/18

ぼんくら陰陽師の鬼嫁』(秋田みやび:原作、遠野由来子:漫画、キャラクター原案:しのとうこ/秋田書店)は、契約嫁がぼんくら旦那とともに怪異に挑む、少し風変わりな新婚生活を描いた物語である。

 突然の火事で住む場所を失い、バイトもクビになる不幸続きのヒロイン・野崎芹(のざきせり)。そんな彼女の前に現れたのは、「公務員だ」と名乗るイケメン・北御門皇臥(きたみかどこうが)であった。衣食住の保証を条件に契約結婚を持ちかけられた芹は、迷うことなくその話に飛びつく。しかし、実際に結婚してみると、彼の正体はまさかの貧乏陰陽師であった——。

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 謎めいた男性の登場、突然持ちかけられる契約結婚。そんな都合の良すぎる話に飛びついて大丈夫なのか?と思わずツッコミたくなるような奇妙な出来事に翻弄されるうちに、物語は一気に加速する。「読者は1話目からハラハラしながら物語に引き込まれ、先の読めない展開に夢中になることだろう。

 本作の魅力のひとつは、陰陽道を舞台にした本格的な世界観である。陰陽師の役割や式神の使い方が丁寧に描かれており、専門的な設定もスムーズに理解できる構成となっている。

 さらに、主人公・芹の行動力と機転の良さが物語を大きく動かしていく。頼りない陰陽師・皇臥をしっかり支える芹の姿が際立ち、夫婦の掛け合いもコミカルである。「鬼嫁」と呼ばれるほどの気の強さと賢さを持つ芹の言動は痛快で、読者を惹きつける。

 式神の可愛らしさも注目したい。特に亀の姿をした式神・護里ちゃんは、登場するたびにほのぼのとした空気を生み出し、物語に癒しを添えている。

 一方で、怪奇描写もしっかりしており、ホラー要素が随所に鏤められている。しかし、過度な恐怖演出ではなく、あくまで物語を盛り上げるスパイスとして機能しており、ホラーが苦手な読者でも十分に楽しめるだろう。伏線回収も巧みに行われ、意表を突く展開で、読者はページをめくる手が止まらなくなる。

 陰陽師ものや妖怪ものが好きな人はもちろん、ユーモアとファンタジーが融合した物語が好きな読者にもおすすめである。「公務員」だと思って結婚したら、実は陰陽師だった——。そんな斬新な設定から生まれる、ユーモラスでスリリングな陰陽師ストーリーをぜひ楽しんでほしい。

文=ネゴト /すずかん

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