嫁が可愛すぎてどうしよう!結婚を諦めた王子とミステリアスな令嬢の婚約から始まる恋【書評】

マンガ

公開日:2025/5/16

 王族に生まれた人間は、その立場ゆえに自身の幸せよりも公的責任を優先しがちだ。現実世界でも、王族の婚姻は自由恋愛よりも政治的な事情によることはよくある。

隣国から来た嫁が可愛すぎてどうしよう。』(さくら青嵐:原作、あざらし県:漫画、桑島黎音:キャラクター原案/主婦と生活社)では、それとは正反対の物語が描かれる。本作では、急な婚約話を機に、思いがけず理想の相手に巡り合った王族の青年の戸惑いと葛藤が、ユーモア溢れるテンポ感で描写されている。

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 主人公は、ティドロス王国の第三王子・サリュ。中性的な美しさを持つ兄たちと違い、父親譲りの無骨な雰囲気を持つ彼は、年頃の令嬢たちから「怖い」「ムサい」「臭い」と言われてことごとく敬遠される。見合いはすべて失敗に終わり、25歳にして早くも一生独身を覚悟していた。

 しかし、そんなサリュのもとに、ある日突然、隣国で婚約破棄された令嬢・シトエンとの婚約話が舞い込む。婚約式で初めて対面した彼女は、噂とは正反対の絶世の美少女! 思わず「存在が罪!」と叫びたくなるほどの可愛らしさに、サリュは戸惑いながらも惹かれていく。しかし、シトエンには何か複雑な事情があるようで――。

 本作の魅力は、女性慣れしていない主人公が美人令嬢を相手に繰り広げる、コメディタッチなやり取りの数々である。理想的な容姿を持つ異性を前にすると、緊張して思わぬ行動を取ってしまうことはよくある。些細な会話でも過剰に反応してしまったり、焦って意味不明な返答をしてしまったり。主人公が自身のペースで婚約者との距離を詰めていく様子は、多くの読者の共感を呼ぶだろう。

 また、主人公を翻弄する婚約者・シトエンの持つミステリアスな魅力も、本作の見どころのひとつだ。彼女の真意が見え隠れする会話やふるまいにも注目してほしい。異世界ものや王宮ラブロマンスが好きな人にはぜひおすすめしたい作品だ。

文=ネゴト / 糸野旬

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