冷徹皇帝との望まれない結婚のはずが… ベタ惚れ状態の彼の本心がダダ漏れ!? 冷たい態度とは裏腹な甘々な心の声に、ドキドキが止まらない!【書評】
PR 公開日:2025/4/18

強面だったり無表情だったりと一見怖そうな相手であっても、心の内は分からないもの。とはいえ、やはり冷酷そうに見えれば怖いものは怖いし、緊張もしてしまうのが普通だろう。でももし「心の声」が聞こえて、しかもそんな相手が実は自分のことをベタ褒めしていたとしたら――!?
『引きこもり令嬢は皇妃になんてなりたくない!~強面皇帝の溺愛が駄々漏れで困ります~』(直江亜季子:作画、百門一新:原作、双葉はづき:キャラクター原案/スターツ出版)は、冷酷イケメン皇帝×彼の心の声が聞こえてしまう主人公との、ムズムズキュンキュンするラブファンタジー。原作小説は、ベリーズファンタジースイート創刊時から最新刊である3巻まで注目を集め続けている大人気作で、コミカライズ版も電子書店で大ヒットを記録している。そしてこのコミカライズ版紙書籍の1・2巻が、2025年2月27日に同時刊行された。
本作品の主人公は、公爵家の令嬢エレスティア・オヴェール。オヴェール家は魔法師の名家と言われているが、エレスティアは強い魔法師が生まれながらに従えているはずの「心獣」を持たず、魔力も低い状態で生まれてしまう。そんな彼女が唯一使える魔法といえば、心獣の心を溶かす「仲よくしましょう」のみ。しかし家族に愛され大好きな本をたくさん読んで育ったエレスティアは、知的で優しい女性へ成長していった。


しかしある日、ある仕組まれた出会いによって、冷酷と恐れられている皇帝ジルヴェスト・ガイザーの第一側室に選ばれてしまう。

しかもそのタイミングで、望まれない妃として悲しい結末を迎えたエレスティアの“前世の記憶”が蘇る。それでも皇族からの話を断るわけにはいかず、彼女はジルヴェストのもとへ嫁ぐことに。だが彼自体は結婚を望んでおらず、最初は冷たくそっけない態度を取られてしまうが――エレスティアの顔にかけられていたヴェールを外されたところで、なんと彼の心の声が! しかも「あの時の愛らしい彼女ではないか!!」「ああ! 濡れる瞳も愛らしい」と、彼女にベタ惚れ状態で――!?



無表情で冷たい表情と甘々な心の声とのギャップに混乱するエレスティアだったが、「噂で聞くような怖い人ではないのかも――」と勇気を出し、ジルヴェストとの関係構築を試みる。結局この日はエレスティアの気持ちを考え、ジルヴェストの「私は古いしきたりに従うつもりはない」という計らいで初夜の儀式は行わずに終わりを迎えた。エレスティアが「あの時の愛らしい彼女」だと気づいたあとの彼は、それはもう優しくて、その甘さと不器用さとのギャップに見ているこちらまでドキドキして叫びそうになった。


心の声が聞こえなければ冷たい表情に隠されてしまうジルヴェストの本音だが、それがダダ漏れなエレスティア相手だとそうはいかない。むしろ彼のこのツンデレ具合が微笑ましく、読めば読むほど癖になってくる。当然ジルヴェスト本人は心の声が聞こえているなんて気づいていないため、自分の不器用さに焦り落ち込む場面も。「本当に可愛いがすぎる! そしてエレスティアが羨ましいっ!」と思わず悶絶してしまった。
しかし甘々なだけでは終わらないのが本作品。魔力が低く心獣を持たないエレスティアを快く思わない貴族もいて、そうした者たちの発する心ない言葉がエレスティアに突き刺さる。そんなときでも、ジルヴェストは彼女のために本気で怒ってくれるが…。また、1巻ラストでは強力なライバルになりそうな公爵家の娘アイリーシャ・ロックハルツが現れ、「あなたは皇帝陛下の足手まといにしかならない」とまで言われてしまい――!?


エレスティアとジルヴェストの関係がどうなっていくのか、これから何が起こるのか、ついつい妄想が膨らみ続きが気になってしまう。また、美しく緻密な作画や大きくてモフモフな愛らしい心獣にも注目したい。これからもきっと、ジルヴェストの心の声で、そして行動やギャップで、ドキドキと可愛さ、かっこよさを提供してくれることだろう。
文=月乃雫