天才外科医が異世界に降臨! 前世で身につけた医療技術で命をつなぐ至極の転生医療ファンタジー【書評】
公開日:2025/4/19

『外科医キアラは死亡フラグを許さない ~死人だらけのシナリオは、前世の知識で書きかえます~』(焦田シューマイ:原作、冬芽沙也:漫画/新潮社)は、異世界転生ものと医療ものの作品の魅力を掛け合わせた、至極の転生医療ファンタジーだ。
現代医療の知識を持つ主人公が未知の世界で大活躍する姿には、一種独特な感動と爽快感がある。
主人公は、天才的な腕を持つ外科医として知られる女性・桐原アキラ。常に患者の命を第一に考える彼女は、病院の方針や権力争いに屈することなく、自身にも周囲にも一切の妥協を許さない姿勢を貫いていた。しかし、そのやり方が上層部の反感を買い、ついには病院を解雇されてしまう。
思いがけず医師としての道を断たれてしまったアキラは、ひょんなことから『シンデレラの婚約』という漫画の主人公キアラ・ベルワースに転生。その世界では魔術が医療の中心となっており、魔術で治せない重症者は見捨てられるのが常だった。
前世の知識を持つキアラは、自身の医療技術を駆使すれば救える命があることに気づく。そんな彼女に協力する形となったのが、医療体制の見直しを検討していた王子・セシル。彼の支援のもと、キアラは次々と重症患者を助け、人々の価値観を変えていくのだが――。
本作の見どころは、周囲から異端視されても怖気づかず、救える命の一つひとつに真正面から向き合う主人公の潔さだ。外科手術という血の通った治療行為には、魔術での治療とは異なる生々しさと、独特の緊迫感がある。患者の命を預かる責任と重み、そして既存の価値観にとらわれず新たな道を切り開く難しさは、転生前の現実世界でのそれと何ら変わらない。
また、そんな主人公にひそかに惹かれていく王子・セシルの心情の変化も、本作の魅力のひとつ。初めは相棒のような関係性だったふたりが徐々に惹かれ合っていく様子は、じれったくも微笑ましい。
異世界転生ものや医療漫画が好きな人はもちろん、ラブロマンス好きにもぜひおすすめしたい作品だ。