ダメ彼をあざ笑うミステリアス彼女。その真意は? 不思議な恋愛模様がクセになる『ダメ人間の愛しかた』【書評】
公開日:2025/4/19

才能なし・学歴なし・お金なし。そんなダメ彼氏と、ミステリアスで愛の重い彼女。ふたりの少し歪な恋模様を描くのが『ダメ人間の愛しかた』(岩葉/KADOKAWA)だ。
主人公・シンバは、無職で何をやってもうまくいかない典型的な「ダメ人間」。デートには寝坊して遅刻、忘れ物ばかりで部屋も散らかり放題。そんなシンバとなぜか交際を続けているのが、クールな美女・ヒズミだ。
シンバはヒズミに愛想を尽かされないように「脱ダメ人間」を目指すものの、失敗ばかり。彼のダメさをあざ笑いながらも、時には優しく肯定するヒズミ。そんな彼女と共に過ごす時間は、シンバにとってかけがえのないものとなっていく。
シンバのダメっぷりには思わず頭を抱えてしまうが、彼は決して自分のダメさから逃げない。ヒズミは、親や同級生から「ダメなやつ」と言われ続けていたシンバを、唯一そのままの姿で受け入れてくれた存在。だからこそシンバは、彼女のためになんとか自分を変えようともがき続ける。
映画で寝てしまった後はなんとか挽回しようと一生懸命喋り続け、寝坊をしないように3台の目覚まし時計を準備し…。
その努力のほとんどが空回りに終わってしまうのだが、懸命に努力する彼の姿はどこか愛らしく、次第に応援したくなってくる。おそらくヒズミも、そんなシンバの真っ直ぐな部分に惹かれているのだろう。
2巻ではシンバがついにバイトをはじめ、同僚たちと関わりながら少しずつ成長していく姿が描かれる。また、気になるヒズミとの出会いから交際にいたるまでのエピソードも明かされる。
なぜ付き合っているのか疑問だったふたりだが、正反対だからこそ不思議とお似合いに思えてくる。少し歪な形を保ちながら、段々と深まっていく関係から今後も目が離せない。
文=ネゴト / fumi