2度目の人生は復讐のために。夫に裏切られ無実の罪で処刑されたヒロインの華麗なる復讐劇【書評】
PR 公開日:2025/4/17

深い恨みを抱えたまま人生を終えたとしても、死後にそれを晴らす手段などない。一度死んでしまえば意識も存在も何もかもがこの世から消え、もはや何もできないのだ。しかし、もし生まれ変わりというものがあり、さらに憎い相手が目の前に現れたとしたら――。
『元夫と愛人の子どもに転生したので、今日から復讐始めます』(yueguanri、mio:作画、横山すじこ:原作/DPNブックス)は、まさしくそんな“もしも”をリアリティ豊かに描いた至極の復讐ファンタジー。怒りや無念さをバネに突き進むヒロインが怨敵(おんてき)をじわじわと追い詰めるカタルシスが話題を呼んでいる。

主人公・ティアナは、シャザール国の辺境伯であるカルディア家の長女。隣国タラッタの若き国王・ルフレッドに嫁いだティアナは、夫に愛され使用人たちからは慕われ、満たされた日々を送っていた。

しかし、穏やかな日常は何の前触れもなく崩れ去る。ルフレッドの愛人であるエルザ公爵令嬢の妊娠が発覚したのだ。ティアナは胸が張り裂けそうな思いだったが、立場上どうすることもできない。「私が君を愛する気持ちは変わらないよ」というルフレッドの言葉ひとつを頼りに、必死で感情を押し込めるほかなかった。


ティアナの災難はそれだけでは終わらなかった。なぜか突然、タラッタへのスパイ容疑をかけられたカルディア家は、全く身に覚えのない証拠を次々と突きつけられる。ティアナは必死に無実を訴えたが、唯一の味方であるはずのルフレッドはただ悲しそうに見つめるばかりで、手を差し伸べてはくれなかった。ティアナにはなすすべもなく、身の潔白を証明できないまま罪人として捕らえられてしまう。やがて判決が下され、彼女は父とともに処刑されることに。

本作の見どころは、主人公の夫・ルフレッドが腹の内に抱えた冷徹さや計算高さの魅せ方にある。中でも、死にゆくティアナの耳元で「仕組んだのは全部俺だよ」と嘲笑し、彼女を弄んでいたことを明かすシーンはまさに象徴的だ。この瞬間に初めて、ティアナは自身の夫が血の通った人間ではなく、人の痛みを心から愉しむ悪魔のような存在であることを骨身にしみて理解したのである。彼の最後の言葉に集約された身も凍るような冷酷さが、物語全体に強烈な印象を残している。

夫の本性を見抜けずにまんまと出し抜かれ、恐ろしい罠にはまってしまったティアナ。しかし、深い恨みを抱えたまま無念の死を遂げた彼女の邪念は時に消えずに残った。処刑され闇に沈んだ意識が戻った瞬間、彼女は自身がベビーベッドの上に寝かされていることに気づく。なんと、夫・ルフレッドと愛人・エルザの間に生まれた第一王女に転生したのだ。
裏切りと絶望の果てに命を奪われた怒りと悲しみは、転生を経てもなお、ティアナの魂に強く息づいていた。前世での恨みを晴らすため、彼女は復讐にすべてを捧げることを決意する。より効果的に夫を陥れようとする彼女の知略が光る展開はまさに圧巻だ。
思いを遂げた先にあるのは真の救済か、それとも――? 人生を踏みにじられた女の誇りをかけた闘いの結末を、どうか見届けてほしい。