「夫のお金=家のお金=妻のお金」──その考え、危険かも!すべての妻の人生を救う、お金事情最新版『妻のお金 新ルール』【書評】

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PR 公開日:2025/4/17

知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール井戸美枝/講談社

 女性が結婚や出産・子育てをすると、お金の問題は家族や将来に関わってくるため、複雑になる。専業主婦、パート/フルタイム勤務など、どんなスタイルを選んでも悩みは尽きず、忙しい日々でつい解決が後回しになっている人も多いのではないだろうか。そんな妻たちを助けるのが、本書『知らないと増えない、もらえない 妻のお金 新ルール』(井戸美枝/講談社)だ。

 著者は、ファイナンシャル・プランナーで社会保険労務士の井戸美枝さん。働き方や子の教育費など、妻にとって気になるテーマについて、お金のエピソードを描く漫画とともに解説する書籍だ。漫画を担当するのは、コミックエッセイ『夫の扶養からぬけだしたい』を手がけた漫画家・イラストレーターのゆむいさん。自身も「“妻のお金”という点でものすごく苦い思いをした」というゆむいさんが描くストーリーを交えながら、井戸さんが、さまざまなお金の疑問に1問1答形式で答えていく。

 本書は「家のお金は妻のお金じゃありません!」という衝撃の言葉で幕を開ける。夫が稼いだお金を、妻が自分のお金として口座に入れるのは実はNG。自分で稼いだお金の貯蓄がなければ、妻は1円も持っていないことになるという。離婚の予定がない人でも、夫なしでは経済的に自立できないという状況には、危機感を覚えるのではないだろうか。

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 そして、ゆむいさんの漫画に登場する妻たちの悩みは切実だ。物価高や将来に関する危機感から行動を起こそうとするものの、夫の無理解や、お金の知識不足がその障壁になるエピソードがリアルで、読者の共感を呼ぶ。

 本書が取り上げるテーマのひとつが、制度改正が話題の「年収の壁」だ。漫画では、妻がパート先の社員登用のチャンスについて夫に相談するエピソードが描かれる。夫は、「扶養を外れると損」というざっくりとした感覚や、「夫が妻を養う」という思い込みから、妻が稼ぐという発想に至らない。それどころか、妻に能力がないかのような発言をする。そんな夫の姿はきついものがあるが、似た経験のある人もいるのではないだろうか。この漫画に続いて井戸さんは、年収の壁と手取りの関連や、その基準を超えて働くメリット、そして気になる「いくら稼げば損をしないか」というボーダーラインを教えてくれる。

 井戸さんは、妻がお金の不安を解消するには、年金などで老後の資金を確保しながら、長く、できれば会社をやめることなく働き続けることが大事だと繰り返し伝える。その上で、保育園入所やスキル習得を支援する制度など、妻の就労への扉を開ける方法も丁寧に教えてくれる。

 本書は、子育て世帯にとって気になる教育費に関する学びも多い。教育には実際いくらかかるのか、親から非課税で教育資金を援助してもらう方法、教育ローンという選択肢についても伝えている。また、「老後資金っていくら必要?」という問題にも切り込む。NISAやiDeCoの仕組みや始め方といった情報も、老後資金のための投資に不安を抱える人に役立ちそうだ。

 本書を読んでよくわかるのが、妻のお金の問題は、経済面の不安だけでなく、妻の人としての尊厳にも関わっているということ。本書は、妻が、自立したひとりの人間として豊かに生きるための武器になるお金の知識を教えてくれる。すべてのがんばる妻にエールを送る1冊だ。

文=川辺美希