なんでも奪っていく「大嫌いな妹」。ついに婚約者まで狙われた姉の逆襲がはじまる『世界で一番嫌いな女』【書評】

マンガ

公開日:2025/4/22

 あなたの嫌いな人は誰? そう問われ思い浮かぶ人物がいたとしても、口に出せないこともある。その人物が「家族」だとしたら、なおさら躊躇してしまうかもしれない。

世界で一番嫌いな女』(ただっち/KADOKAWA)の主人公は、26歳のエリ。学生時代から付き合っている彼にプロポーズされ幸せの絶頂のはずなのに、ある不安が脳裏をよぎる。それは、“大嫌いな妹・まりあ”のことだった。

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 幼いころから姉のものを羨ましがってきた妹のまりあは、ことあるごとにエリの大切なものたちを奪っていく。かわいらしい見た目の妹と比べられることに嫌気がさし、できるだけ距離を保ってきたエリ。しかし彼を連れて実家を訪れた際に、紹介するつもりのなかったまりあに遭遇してしまう。

 周囲に好かれる妹だからこそ「妹が嫌い」と口にすれば自分が悪者になっていく。彼までもがいつの間にか妹を庇うようになり「妹に彼をとられるのでは」という不安が日に日に膨らんでいくエリ。そんな彼女の心配をよそに、まりあは着々と彼に近づいていく。
 
 幼少期のトラウマは、大人になっても簡単に癒えるものではない。だがそれを口にすれば「執念深い」と非難されることもあり、自分の本音を誰にも伝えられず、ひとりで抱え込む人も少なくないだろう。とくに家族とは「仲良くあるべき」という社会的期待があるからこそ、自分を責めてしまうこともあるのだ。

 限界を迎えたエリは最悪の選択をしそうに…。しかし彼女は賢明な道を選ぶ。その姿には勇気をもらえるだろう。姉妹や家族の悩みを誰にも打ち明けられずにいる人に、ぜひ読んでほしい作品だ。

「世界で一番嫌いな女」まりあとエリはどんな結末を迎えるのか。姉妹の選択をどうか最後まで見届けてほしい。

文=ネゴト / くるみ

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