悪女シンデレラと嵌められた義理の姉。死に戻った義姉はシンデレラに復讐できるのか――。“感情のジェットコースター”を体験するラブサスペンス【書評】
PR 公開日:2025/4/18

シンデレラといえば、誰もが憧れるお姫様の代名詞。でも、そんな彼女の内面が、策略と野望で真っ黒だったら? 『私はシンデレラに殺された』(楠木薫/白泉社)は、悪女シンデレラに嵌められ命を落とした義姉が、何度も“死に戻り”ながら真実に迫る、ループ型の復讐サスペンスだ。

「なぜ、この子の本性に気づけなかったのだろう」
主人公のシャーロットは、シンデレラの義理の姉。おとぎ話と違い、家族で仲良く暮らしていた。しかしある日、母と妹とともに国王暗殺の罪で捕えられ、絞首刑を言い渡されてしまう。身に覚えのない罪に絶望する彼女に向かって、シンデレラは微笑みながら告げる。王様を殺したのは私、と。怒りと憎しみを叫びながら、シャーロットは処刑台へ送られた。
「もう一度過去に戻れたら、こんな結末は絶対に選ばない――」
目を覚ますと、そこは5年前。シャーロットは過去に戻ってきていた。愛する家族を守るため。そして、シンデレラに復讐するため。“死に戻り”の復讐劇が、ここから始まる。

人気漫画サイト「花とゆめWEB」で驚異のPV数(配信時点の同サイト史上最多PV数)をたたき出した話題作が、ついに上下巻で単行本化された。物語のヒロインがじつは“悪役”だった。そんな構図は、近年の「転生もの」や「ループもの」ではおなじみの展開となりつつある。だが本作は、そうした流行の要素を物語の構成に丁寧に組み込み、緊張感のある“本格サスペンス”へと昇華させている。

若く美しいうちに王妃になりたい。天使のような愛らしさの裏で、幼い頃から巧みに謀略を仕掛けるシンデレラ。その姿には、人間離れしたゾッとする怖さがある。
一度目のループの直後、「死に戻った」事実に混乱したシャーロットは、シンデレラを拒絶してしまう。何かを悟った彼女は、夜、二人きりの部屋で本性を現す。可憐な笑顔が一瞬にして狡猾に歪む様子に、戦慄を覚えるシャーロット。「あの子を放っておいたらダメだ」とシンデレラ殺害を決意するものの、何者かの手によって阻まれてしまう。今際の際で目にしたのは、シンデレラの黒い微笑。そして二度目のループが始まる……。

ループするごとに迫りくるシンデレラの悪魔的な罠に、主人公はもちろん、読者も追い詰められていく。
孤立無援な状況の中、シャーロットはあることをきっかけに、現国王の甥・オーウェンと出会う。かつて貴族だった彼は、家族を殺されるという過去を背負っていた。「昔の自分のようで放っておけない」と語る彼に、シャーロットも次第に心を開き、やがてループの事実を打ち明ける。二人は手を組み、シンデレラの企みを阻止しようと動き出す。緊迫感あふれるストーリーの中で描かれるロマンスも、本作の大きな魅力のひとつだ。

下巻からは、希望に手が届いたと思った瞬間、突き落とされるような展開が続く。二転三転していくストーリーに、読者は登場人物たちと同じ“感情のジェットコースター”を体験するだろう。やがてシンデレラを凶行へと駆り立てたものの存在や、“共犯者”が抱える心の闇が明かされていく。誰からも愛され、清らかだったはずのお姫様・シンデレラは、なぜ狂気に堕ちたのか……。
『私はシンデレラに殺された』は4月18日に上下巻同時発売。果たしてシャーロットはシンデレラの魔の手から逃れ、運命を変えることができるのか。前代未聞の童話サスペンスを刮目せよ。
文=倉本菜生