「しゅごキャラ!」14年ぶりの新シリーズ! 中学生になったあむが、新旧キャラと一緒に姉妹校で奮闘【書評】

マンガ

公開日:2025/5/2

しゅごキャラ ジュエルジョーカーPEACH-PIT/講談社

 2006年から2010年にかけて「なかよし」で連載され、アニメ化も果たした大ヒット作『しゅごキャラ!』。ファンタジックな世界観と個性豊かなキャラクターたちが人気を博し、多くの読者に愛された本作が、14年の時を経て、待望の新シリーズ『しゅごキャラ! ジュエルジョーカー』(PEACH-PIT/講談社)として帰ってきた。

 主人公・日奈森あむは、「クールな自分」と「本当の自分」とのギャップに葛藤する少女。前作では、自身の“こころのたまご”から生まれたしゅごキャラたちとの出会いを通じて、自分自身と向き合い、成長していく姿が描かれた。そして今作では、あむが聖夜学園小を卒業し、中高一貫の姉妹校・アルカナ学園へと転校するところから物語が始まる。

 新たな舞台であるアルカナ学園では、「生徒たちの“こころのたまご”に×印がついている」という不穏な噂が広がっている。“こころのたまご”とは、夢や理想、憧れといった「なりたい自分」の象徴。それに×印がつくことで、心が曇り、自己否定に陥ったり、攻撃的な言動に走ったりするという。

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 過去に“ガーディアン”として×たま(ばつたま)を浄化する特別な役職「ジョーカー」を担っていたあむにとって、この異常事態は見過ごせない。再び人々の心を救うため、あむはアルカナ学園に潜入し、調査に乗り出す。

 本作では、懐かしいキャラクターたちの再登場にも注目したい。かつてガーディアンのK(キングス)チェアだった辺里唯世は、ナイトのようにあむを支え、読者の心をときめかせる。そして、ミステリアスな猫耳男子・月詠イクトも登場する。前作ではあむに「おまえが好きだ」と告白しており、ふたりの関係が今後どう展開していくのかも、見逃せないポイントである。

 一方、新たなキャラクターとして注目を集めているのが、猫耳という個性的なルックスを持つ“今どき男子”・二夜(にや)である。配信者として活動し、美容やメイクにも通じる彼は、現代の若者像を色濃く反映したキャラクターだ。SNSでは笑顔を振りまきつつ、リアルではつかみどころのない姿。そんなギャップにこそ、「自己演出」と「本音」の間で揺れる現代的な葛藤がにじむ。

「しゅごキャラ!」シリーズが描き続けてきたのは、「本当の自分」と「なりたい自分」の間で揺れる、思春期ならではの葛藤である。そのテーマは、SNSが日常となり、多くの人が“理想の自分”をネット上に投影するようになった今、より複雑で切実な意味を帯びている。

 SNSは自由に自己表現ができる場である一方で、他者との比較によって自己肯定感が揺らいだり、他人の評価を過剰に気にしてしまったりする場でもある。そのため、自分の夢や憧れを素直に語ることが、かえって難しくなっているのかもしれない。

 そんな時代において、“こころのたまご”というメタファーは、夢や憧れにまっすぐだったあの頃の気持ちを思い出させるだけでなく、今という時代を生きる大人たちの胸にも、そっと響いてくる。

 めまぐるしく変わり続けるこの時代に、「自分らしさとは何か」という普遍的な問いを、あの頃と変わらぬまっすぐな眼差しで、私たちにもう一度投げかけてくれる本作。

 今という時代を生きるすべての世代に寄り添い、そっと背中を押してくれる新シリーズ『しゅごキャラ! ジュエルジョーカー』に、ぜひ注目したい。

文=ネゴト /すずかん

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