押し寄せるアラサー・ライフ・クライシスをどう乗り越える?計画通りに行かない人生の歩き方【書評】
公開日:2025/5/14

「人生100年時代」と呼ばれる今、20代後半から30代にかけて訪れる不安と迷いの時期を「クォーター・ライフ・クライシス」と呼ぶ。将来や自分の価値に悩み、ふと立ち止まりたくなる時期だ。『アラサー・ライフ・クライシス』(ジェラシーくるみ:原案、Sumi:漫画/KADOKAWA)は、そんな仕事や結婚、出産など人生の大きな岐路に立たされ悩めるアラサー女子に向けた処方箋のようなコミックだ。
30歳までには結婚するつもりで人生計画を立てていたのに、結婚目前で彼氏の浮気が発覚した茜。仕事一筋で進んできたけどロールモデルを見つけられず、立ち止まる瑞希。相手に合わせてしまい素の自分を出せず葛藤する婚活中の桜子。次々に押し寄せる選択の連続を、どう乗り越えればいいのか? どんな未来を選べば幸せになれるのか? 選択を迫られるアラサー女子たちの悩みや葛藤が描かれる。
学生から社会人となり、やっと仕事に慣れて楽しくなってきた頃には30歳目前。結婚に出産・キャリアなど、一気にやってくるアラサー女子の人生のチェックリストは、多すぎてどこから手をつけたらいいのだろうか…。賢く生きるための人生設計が、いつのまにか、「したい」よりも「しなきゃ」に支配されてしまっていた…。失敗はしたくないから、ちょっと先をゆくロールモデルが欲しいのに、どこかしっくりこない…。婚活をしていると、自分自身を認めることも相手にさらけ出すこともエネルギーがいると思い知らされる…。と、彼女たちが感じる不安や焦りの数々を読んでいると、自分と同じなんだと気づかされるだろう。
SNSなどを通して他人の生活が目に入る今を生きる我々は「幸せになりたい」のか「幸せに見られたい」のか分からなくなることがある。いつのまにか、同じ岸にいたはずの人たちが対岸へ渡っていた――そんな感覚に、焦りを覚えることはないだろうか。本作は、悩める女子たちのエピソードを通して、周りのノイズを取り除いて立ち止まってみることの大切さを教えてくれる。
人生の問題が山積みだし、降りかかるプレッシャーは山ほどある。自分のあり方やこれからの生き方に焦りや不安を感じるアラサー女子に「不安を抱えるのは自分だけじゃない」と静かに、でも確かに背中を押してくれる一冊だ。
文=ネゴト / Ato Hiromi