毎日いっしょに帰れるだけで、こんなに幸せになれる!友達から恋人になりたて男子高校生のピュアラブストーリー『帰り道はずっと君と』【書評】

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公開日:2025/5/2

帰り道はずっと君とシロリ/白泉社

 学校が終わった解放感を共有しながら、仲のいい友達とたわいない話をしつつ下校する。当たり前のようで、かけがえのない時間だ。もしもその友達に恋人ができたら、友達より恋人を優先するようになったら、当たり前だった下校の時間は突然終わってしまうのだから……。シロリ氏の『帰り道はずっと君と』(白泉社) は、両片思いの高校生男子が、 2人で一緒に帰る日々を続けたい気持ちから、お互いに一歩踏み出していくピュアラブストーリーだ。

 天然気味な高校生・水町つばさ (みずまち)は、入学式の日にクラスメイトの桃井勇士(ももい・ゆうじ)に話しかけられて以来、彼に憧れと好意を抱いている。しかし「親友」として勇士と過ごす帰り道を大切にしているつばさは、その想いを彼に伝えられないでいた。勇士は、つばさと同じく帰宅部だが元サッカー部のエースで、勉強面でも頼りになる存在だ。

 2年生に進級したある日、つばさは勇士が真剣な表情の女子と話しているのを見かけてしまう。勇士に恋人ができてしまったら、もう一緒に帰れないかもしれない、と落ち込むつばさ 。しかし、つばさが女子とのことを勇士に尋ねたことがきっかけで、突然のキスとともに2人は「付き合う」ことになる。

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 「付き合う」とは具体的にどうすればいいのか?と真剣に悩むつばさはかわいらしい。それでも、まずはデートしようと誘い、勇士に楽しく過ごしてほしいとがんばる、素直で前向きな性格だ。手をつなぐだけでドキドキして一日落ち着かない……そんな恋人ができたばかりの 、初々しい気持ちが純度高めに描かれている。そうしたつばさの頑張りに、強面で言葉少ない勇士が、優しい笑顔を見せ、ついつい独占欲を出してしまう…と普段とのギャップを見せてくれるのも本作の魅力だ。

 デートの帰りに、衝動にかられた勇士がつばさを押し倒し、深い関係へと進んでいく様子が詳細に描かれる。しかし、つばさもただ流されるわけではなく、自分の意志で「好き」と伝えて、勇士にリードしてもらう姿にかわいさと男の子らしさを感じる。恋愛経験が乏しいつばさは戸惑いながらも、自分のしてあげたことに勇士の体が反応してくれることが嬉しいと気づく。相手が嫌じゃないかと気にしながら、少しでも喜んでほしいと願う。その様子からは、激しく抱き合うことも、帰り道のたわいない話と地続きの「好き」を伝えるコミュニケーションだと実感でき、どこかほのぼのする。つばさの無防備な色気に勇士が自制心を抑えきれず、体育館倉庫などのリスキーな状況でも求め合ってしまうのも、お互いの「好き」がピュアなためか、爽やかさがある。

 つばさと勇士は同じクラスの秘密の恋人として、お互いの一挙一動を気にしながら「好き」を積み重ねる。どんなことがあっても、結果的には2人の思いが深まる方へたどり着く。多感な男子高校生たちが、お互いの支えとなり、いつでもぬくもりを伝え合える幸福感に癒やされる。

文=和智永妙

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