八木勇征さんが選んだ1冊は?「ホラーだけど、ときに切なくて残酷。10代らしい未熟さも胸に刺さります」

あの人と本の話 and more

公開日:2025/5/14

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年6月号からの転載です。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、八木勇征さん。

(取材・文=倉田モトキ 写真=TOWA)

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「ホラーは得意ではないんです。でも、気になるから読んじゃう(笑)。その矛盾も含めて面白くて。この作品はそこに謎解きが入ってくるから、なお読む手が止まらなくなります」

 八木さんの推薦本は『光が死んだ夏』。作者モクモクれんさんとの本誌の対談(2024年1月号)も話題を呼んだ、筋金入りの愛読者だ。

「幼馴染みの中身が、実は体を乗っ取られた化け物だったらという設定は怖くもあり、すごく切ない。理解し、受け入れたつもりでも、“親友じゃない”という現実と向き合わなくてはいけなくて。バカ話で笑っても、これって彼らにとって意味のあるものなのかと考えてしまうと虚無感しか残らない。ほんと、残酷ですよね」

 二人の主人公たちに対し、八木さんはあえて感情移入せず、俯瞰で彼らの言動を見届けているという。

「ヒカルの中身が別人だから、二人だけのときでも三人いるように感じることがある。その瞬間、ぐっと怖さが増すんです。また、10代の彼らは自分の感情や考えをまだ冷静に分析できない。お互い幸せになる未来を願いながらも、それを上手く行動に結びつけられないもどかしさに少し青春も感じて。最後はどんな結末を迎えるのか、すごく楽しみです」

 そんな八木さんが現在出演中のドラマ『あやしいパートナー』もまた、先の読めない展開が注目を集めている。韓国の人気ドラマをリメイクした今作で、八木さんは検事の立石春斗を演じている。

「“最悪の検事”と呼ばれるほどキレ者の彼が、破天荒な宮下さくらと出会ったことで変化していく。さくらといると、自分の思い通りの展開にならないことばかりで。その戸惑いが、彼のかわいらしさに繋がっていく様子が演じていて面白いです」

 春斗が痴漢に間違われたことから始まった最悪な二人の関係は、やがて奇妙な運命に導かれていく。

「さくらはこの運命をプラスにとらえ、春斗は悪縁だと思ってる。考え方が真逆ですよね(笑)。でも彼らには、恋人に浮気されて深く傷ついているという共通の痛みがあって。だから、正義感の強い春斗はさくらを放っておけないんだと思います」

 春斗はつねにクールでクレバーだ。口数も少なく、「何を考えているかわからないからこそ、そこを掘り下げていくのが楽しい」と八木さん。

「二人の言動がちぐはぐであればあるほど、ラブコメとしての面白さも際立つと思いますので、ぜひそこにも注目していただきたいです」

ヘアメイク:福田 翠 スタイリング:中瀬拓外

やぎ・ゆうせい●1997年、東京都生まれ。FANTASTICSのボーカル。2021年のドラマ『美しい彼』で本格的に俳優活動を開始。最近の主な出演作に映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』、ドラマ『最期の授業-生き残った者だけが卒業-』『南くんが恋人!?』など。8/22に映画『隣のステラ』が公開予定。

『光が死んだ夏』(1〜6巻)
モクモクれん 角川C・エース 各748円(税込)
行方不明になっていた親友の光が突如、生還する。しかし、よしきは光が別のナニカに取り憑かれていることに気づく。同時に、彼らが暮らす村に異変が起き、二人は解明のために動き出すことに。そんな矢先、この一連の謎を知るような人物・タナカが彼らの前に現れ、ヒカルの本当の正体について語り始める。

ドラマイズム『あやしいパートナー』
原作:SBS/クォン・ギヨン(『あやしいパ-トナー』) 監督:安川有果、吉村慶介 出演:八木勇征、齊藤京子、草川拓弥、森田 想、高杉 亘、渡辺いっけいほか MBS 毎週火曜 深夜0:59 ~、TBS 毎週火曜 深夜1:28 ~より放送中 TBS放送後、TVer・ディズニープラスで配信 
●検事の春斗(八木)は自分を痴漢だと決めつけた司法修習生のさくら(齊藤)と街で遭遇し、彼氏と喧嘩しているところを思わず助けてしまう。数日後、春斗は検察修習を受けにやってきたさくらと再会。そこから二人の不思議な運命が始まっていく……。