クール男子の頭の中は恋が暴走中!テレパスJKと無自覚溺愛男子のすれ違いラブコメ【書評】
公開日:2025/5/22

『高森くんを黙らせたいっ!!』(春乃カミハル/スクウェア・エニックス)は、人の心の声が聞こえる女子高生と、脳内で愛が暴走しているクール男子とのすれ違いを描いたラブコメディ。
主人公の南川さんは、生まれつき人の心の声が聞こえてしまう“テレパス体質”の持ち主。人間関係に悩みながらも、ようやく落ち着いた高校生活を送り始めた。そんな彼女の隣の席に現れたのが、ポーカーフェイスで無口な男子・高森くん。周囲には、考えていることがわからないと思われている彼だが、心の中ではまるで別人。「南川さんすき」「こんな天使みたいな人いる?」「今日も可愛い」と、少女漫画ばりのテンションで愛を叫んでいる。
もちろん本人は、心の声がすべて筒抜けになっていることに気づいていない。バレてないつもりでも、ぜんぶ聞こえてる…そんな関係が最大の笑いどころ。静かな表情の裏で溺愛モード全開というギャップがとにかく愛おしい。
高森くんはただデレデレしているわけではなく、紳士な一面も。南川さんの繊細な性格や気遣いすぎてしまう一面にもきちんと気づき、言葉ではなく行動でそっと寄り添ってくれるのだ。たとえば、怪我をした南川さんがひとりで保健室に向かおうとしたときには、たまたま通りかかったふりをして、そっと背負ってくれたり。その不器用でやさしい振る舞いに、胸がじんわり温かくなる。
一方の南川さんは、高森くんの脳内から発せられる“好き”のシャワーを浴び、「早く嫌われないと心臓がもたない…」と動揺しっぱなし。ふたりのかみ合わないやり取りに、思わずクスッと笑ってしまう。
恋愛漫画といえば“相手の気持ちがわからない”すれ違いが定番だが、本作では“伝わりすぎている”のに進展しないという、もどかしさが新鮮。読めば読むほどふたりの距離が縮まるのが楽しみになっていく。
『高森くんを黙らせたいっ!!』は、ラブコメ好きはもちろん、笑って癒されたい人、ギャップ男子にときめく人に手に取ってほしい作品だ。