悪女に仕立て上げられ追放された令嬢が出会ったのは美しくも恐ろしいオオカミ。さらに、孤高の陛下から溺愛されて――【書評】
PR 公開日:2025/5/14

美人だったり、頭が良かったり、一見すると恵まれているように感じる人間でも、そうした突出した面があるからこそ辛い立場に追いやられることもある。人間は基本的に自分と他人を比較してしまう生き物で、そこから生まれる嫉妬や妬みといった感情の前では、何かを持っている人間は弱い立場に追い込まれがちだ。
『悪女のレッテルを貼られた追放令嬢ですが、最恐陛下の溺愛に捕まりました』(ゴゴちゃん:作画、篠宮渚:原作、南々瀬なつ:キャラクター原案/スターツ出版)の主人公エスター・ランジェットもまた、生まれ持った美貌によって「悪女」に仕立て上げられてしまった人間のひとり。本作は第2回ベリーズカフェファンタジー小説大賞【異世界恋愛ファンタジー部門賞】受賞作である小説が原作となっており、2025年4月25日にコミカライズ版が発売されたばかり。
薬師として働いていたエスター・ランジェットは、地主の息子グレイソンにしつこく婚約を迫られていた。しかし彼には婚約者がいて、エスターはその婚約者に嫉妬され、毒殺の濡れ衣を着せられて生まれ育った町を追放されてしまう。


雨の中、ひとり国境を越えるため歩き続けていたエスターは、途中で野犬に襲われるが、危機一髪のところで美しい狼に助けられた。だがそのまま意識を失い――気づくと知らない屋敷のベッドに寝かされていた。


エスターを助けてくれたのは、隣国エピナンド王国の国王ラシルヴィスト・ベルナルド。そこで彼女は、助けてくれた狼がヴォルランという別の生き物だと知る。エスターはヴォルランのラヴィスに心を支えられながら、ラシルヴィストに命じられた課題をこなしていたのだが。それを無事達成したところで彼から「俺の女になれ」と言われ、今度は婚約者のフリをすることに――!?

エスターは美しさから、生まれ故郷では周囲に疎まれることの多い人生を送ってきた。でもエピナンド王国は獣人やエルフなどさまざまな種族が暮らす国で、エスターを見た目で判断する相手は誰もいない。彼女の持つ真っ直ぐな優しさや純粋さ、不安をそのまま受け入れ認めてくれるのだ。見た目による偏見なく普通に接してくれる人々に、エスターがどれほど救われたことだろう。ラヴィスと過ごす時間も、彼女の心を溶かすいいリハビリになったのかもしれない。


一方で、エスターはラヴィスのことをラシルヴィストの飼い犬だと思っているが、どうやらこのふたりの関係はもっと別なもののよう。

まだはっきり明言されているわけではないが、周囲の人々の反応から「あれ、もしかして……?」と想像しドキドキしてしまう。真実を明かされた際にエスターがどんな反応をするのかと考えると、既にワクワクが止まらない。ああ、待ち遠しい……! そして答えが知りたい!!
後半では、ラシルヴィストとともに舞踏会へ行くことになったラスターがダンスの練習に奮闘するのだが、そこでも見ているこちらが恥ずかしくなるようなドキドキシーンが満載! ゴゴちゃん先生の圧倒的画力で描かれる、可愛いもかっこいいもドキドキもワクワクも詰め込まれた王道シンデレララブファンタジーに、思わずのめり込んでしまうこと間違いなし!
文=月乃雫