皇太子の正体は無邪気すぎる男装女子!嫌われ令嬢と皇太子の百合ロマンスから考えるパートナーのかたち【書評】

マンガ

公開日:2025/5/23

©︎散葉ちんみ/一迅社

嫌われ魔女令嬢と男装皇子の婚約』(散葉ちんみ/一迅社)は、闇魔法の力を持つがゆえに疎まれてきた“嫌われ令嬢”が、まさかの“男装の皇太子”に溺愛されるという、異色のファンタジー百合系ラブコメディだ。

 ヴラッドリー家の末娘・イヴリスは、闇魔法の才能を持って生まれたことで「魔女」と呼ばれ、家族や町の人々から蔑まれ続けてきた。唯一の支えだった幼なじみにも裏切られ、婚約者からは一方的に婚約破棄を告げられる。味方も希望もすべてを失った彼女の前に現れたのは、隣国の皇太子・シエル。しかしこの皇太子、実は男装した女性だった。

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 初対面でイヴリスの闇魔法を「すっごーい!」と目を輝かせて称賛し、思わず抱きついてくる無邪気なシエル。男装姿で見せる凛々しさと、素顔のときのおっちょこちょいな一面とのギャップが魅力的で、読者の心を一気につかむキャラクターだ。

 “女装男子”が登場する作品は多いが、“男装女子”によるファンタジーラブコメは斬新。同性婚への偏見といった社会的テーマにも触れながら、テンポの良さと胸キュン展開が同居した物語は、笑ってときめける魅力にあふれている。ラブコメとしてのキュン要素に加え、社会的なメッセージも織り込まれたストーリーは読みごたえもたっぷりだ。

 さらに印象的なのは、ただ守られるだけではないイヴリスの強さ。「お互いを信頼して肩を並べて歩む。伴侶ってそうあるべきじゃないかしら」というセリフに象徴されるように、伴侶として共に道を切り開いていこうとする姿勢が描かれている。守られるだけのお姫様ではなく、自らも相手を信じて支える。そんなイヴリスの芯の強さが胸を打つ。

「悪役令嬢×百合」ジャンルが好きな方はもちろん、“かっこよさ”と“かわいさ”を併せ持つキャラクターにときめきたい人にもぜひ読んでほしい。予想外の展開とともに、ふたりの距離が縮まっていく恋模様から目が離せない!

文=ネゴト / すずかん

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