私はこの双子に飼われている――。異常なまでの独占欲で少女を支配する背徳ラブサスペンス【書評】
公開日:2025/6/9

「イケメン双子に溺愛される」という、まるで夢のような設定。しかしその実態は、独占、束縛、嫉妬が渦巻く“狂愛”の世界。
『飼われる、私。―狂愛の双子に囚われて―』(露茶:作画、蒼月イル:原作/KADOKAWA)は、美貌と狂気を併せ持つ双子・綴(つづり)と語(かたり)、そして彼らに13年間“飼われる”ように生きてきた少女・夜永(よなが)との、歪んだ三角関係を描いた物語だ。
この歪な関係の始まりは、夜永がまだ5歳だった頃。父親に連れられて訪れた不動家で、双子の“お遊戯相手”として引き取られた彼女は、その日を境に、逃れられない関係に囚われていく。
双子の機嫌ひとつで与えられる“躾”という名の支配。まるで鳥籠の中で育てられるペットのように、夜永は感情すら押し殺して生きることを強いられる。
夜永がどれほど逃れようとしても、彼らの“愛”からは、そう簡単には抜け出せない。しかし、極端なまでに強く求められ、深く愛されるという経験には、どこか抗えない魅力がある。夜永の目を通して描かれるその世界には、不思議な熱とざわめきが漂い、読者の心にもじわじわと染み込んでくる。
綴と語は、世間の注目を集めるほどの美貌を持つ完璧な青年たち。けれど、彼らの執着の矛先は夜永ただひとりに向けられている。とくに印象的なのは、夜永がほかの男子と話しているところを見られた後、双子の兄・綴が彼女に“恐怖の忠告”をするシーン。その異常なまでの独占欲と愛情に、思わずゾクリとする読者も多いだろう。
本作の魅力は、ただのヤンデレ作品にとどまらない点にある。双子たちは、“孤独”や“渇望”と向き合いながら、不器用なかたちでしか愛を表現できない。そんな不完全さの中に、人間らしさがにじみ出ている。一見異常に見える感情の奥には、真っ直ぐで純粋な想いが宿っていて、だからこそ読む者の胸を強く締めつける瞬間が幾度も訪れる。
夜永と双子の関係は、このまま共依存へと沈んでいってしまうのか。それとも、誰かが誰かを救い出す日は来るのか。この愛の行方を、ぜひあなたの目で見届けてほしい。