再会した「運命の彼」には5人の彼女が。だけどどこかワケありで…? 超人気アーティストを取り巻く新感覚ラブコメディ【書評】

マンガ

公開日:2025/5/20

 夢物語のような恋と、崖っぷちの現実。その狭間で揺れながらも、自らの手で幸せをつかもうとする主人公の姿を描く『サバイブとマリーミー』(芝浦晴海/KADOKAWA)。

 本作ではひとりの男性をめぐって複数の女性が登場するが、そのストーリーはハーレムものの枠に収まりきらない。 

advertisement

 幼い頃から色々なものを「元通り」にすることが好きだった本居朝日(もとおりあさひ)25歳。その特技を活かし、家事代行で生計を立てている。しかしトラブルに巻き込まれ、職なし家なしの崖っぷち状態に。

 そんな中、新たな家事代行の仕事に応募。依頼主は武道館ライブを控える人気アーティスト・七家語(なないえかたる)であった。さらに彼は、小学生時代に同級生から浮いていた朝日に手を差し伸べてくれた、憧れの男の子でもある。ずっとあの時の男の子と再会したいと願っていた朝日は、七家との運命の再会に心をときめかせる。

 しかし七家の住む豪邸には、彼の恋人だという5人の女性たちがいて…。幼い頃の七家との思い出の中に生きていた朝日は、現在の彼の姿にショックを受けてしまう。

 複数の女性と交際し、彼女たちを自分の屋敷に住まわせる。そんな七家の考え方は一見突飛だ。朝日も当初は、七家の行動に強い嫌悪感を抱いていた。しかし彼らと暮らす中で、次第にその在り方が理にかなったものに映ってくる。

 5人の女性たちは、モデル、エッセイスト、はたまた現役大学生など、さまざまな分野に精通する存在。七家のためにできることを考え実行する各々の姿は、読者から見ても刺激を受けるだろう。

 一見完璧な七家も神様のような存在ではなく、不安定さを抱えて生きている。そして5人の彼女たちにも得手不得手がある。それぞれの足りない部分を補い、支えあっている彼らは、なんだか羨ましくも思えてしまう。

 幼い頃の出会いから七家に強烈な運命を感じ、彼との美しい思い出に半ば依存してきた朝日。5人の恋人たちは、そんな朝日とは対照的だ。だからこそ、彼女たちの存在が朝日に新たな価値観をもたらしていく。

 本作は凡庸なハーレムラブコメディではない。思い出の中に生き、漠然と「あの日の運命の彼から愛されたい」と願っていた少女が、愛する人の現在地を見つめながら成長していく物語。

 多様な価値観に気づかせてくれるパワフルな5人の恋人たちと朝日の姿は、きっと読者の背中も押してくれるだろう。

文=ネゴト / fumi

あわせて読みたい