鈍感女子に振り回されるチャラ男子が尊い! 元男子校に入った超真面目女子と元弓道部男子の王道ラブストーリー【書評】
公開日:2025/5/20

クラスの級長で真面目女子・山田仁菜と学校に来ないチャラ男・村田美羽による青春ラブストーリー『山田の学級日誌』(青海瑠依/白泉社)。正反対なふたりの初々しい様子を綴る物語、かつ大人でもきゅんとすること間違いなしの作品だ。
舞台は元男子校の高校。第1期生の女子は少なく、山田はクラスにたったひとりの女子だ。男子校ノリのまま騒ぐクラスメイトに辟易する毎日だけど、山田は名門大学の推薦枠を勝ち取ることを目標にひとり粛々と日々を過ごす。

ある日、山田は担任から不登校中のクラスメイト・村田にプリントを渡しに行くよう頼まれる。村田は骨折を機に学校に来なくなった元弓道部員。女の子と遊んでいる方が楽しいという村田をゲームセンターで発見したものの、全く取り合ってもらえない。

「ゲームで俺に勝てたら学校に行ってもいいよ」と冗談半分で言われた山田はゲームを研究。休日返上で練習し――
鈍感&やきもち焼き ピュアなふたりが甘酸っぱい!

日々を無為に過ごしているように見える村田だが、骨折前は弓道一直線。真剣に取り組んでいただけにケガの衝撃も強く、その反動でチャラい生活を送る。そんな以前の自分を知り、「向き合えばちゃんと応えてくれる人」と言ってくれた山田のことが突然気になり出す村田。山田の、恋愛に鈍感だからこそのストレートさに翻弄される村田がかわいい。


山田は村田のおかげもあって、クラスの他の男子とも次第に喋れるように。しかし山田とクラスメイトの距離が近くなると、村田がどこからか飛んできて威嚇する。そんなわかりやすいやきもちも、こちらの心をくすぐる。

気づけば応援したくなるふたりの初々しさが、この作品に幅広い層がときめくことができる理由だ。
真面目で冗談が通じないと言われクラスになじめない山田と、わざとチャラく振る舞うことで挫折から逃げる村田。本作はそんなふたりがお互いのおかげで成長していく物語でもある。
例えば村田が行き詰まった時に道を拓いてくれるのは、山田の掛け値なしの信頼だ。
一方、山田がその生真面目さゆえにピンチになった時、村田は一緒に解決の糸口を探してくれる。

ふたりはまだ高校生。失敗したって恥をかいたって、前に進んでいかなければならない。そんな大人になるまでの道のりを支え合うふたりの絆がどんどん深まっていくのも、この作品の見どころだ。
少女漫画らしいかわいらしさのある絵柄にも注目。髪の毛の流れやファッション、背景の細部までしっかり描かれた繊細さはさすが連載誌『花とゆめ』クオリティだと感じる。

最新2巻も文化祭に夏休みにと、学園ものらしいエピソードが満載。行事を経るごとに距離も縮まり、ふたりはお互いのことを徐々に理解していく。その中で、どうしても相手と距離をとってしまう村田が抱えている、ある秘密も判明。その秘密を知った山田の反応は……?
ピュアなふたりのラブストーリーにこれからも注目してほしい。
文=原智香