松村沙友理主演ドラマが話題!恋愛トラウマを持つアラサー女子と距離感バグの年下男子の恋【書評】

マンガ

公開日:2025/6/2

 甘くて幸せなだけのラブストーリーに、少し疲れてしまった。そんな人にこそ届けたい一冊がある。『やぶさかではございません』(Marita/KADOKAWA)は、ほんのり苦みのあるラブコメ作品。2025年4月からは、元乃木坂46の松村沙友理主演のTVドラマも放送されている注目作だ。

 主人公の不思議麻衣(ふしぎまい)は、恋愛に少々不器用なアラサー女子。中学生時代の初恋の傷がトラウマとなり、いつも考えすぎてしまい恋に向き合うことができない。そこで心機一転、地元を離れて新天地へ引っ越すことに。新たな職場は、店内での会話が禁止された「サイレントカフェ」。私語禁止の職場で出会ったのが、年下のイケメン店員・上下亮(かみしもりょう)だ。

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 一見クールな亮だが、頻繁に話しかけてきたり理由をつけてご飯に誘ったり…、麻衣へのアプローチが一途で一直線。ストレートに好意をぶつけてくる姿に、麻衣と一緒に読者も思わずドキドキするだろう。彼の内面も時折描かれるが、想像以上の愛の深さや、ウブっぷりには思わず笑いが溢れてしまう。表向きはクールでも、実は麻衣のことが大好きすぎて、その不器用な愛情表現に、思わず頬がゆるむ。ゆっくりと近づいていく2人の距離に、ときめくこと間違いなしだ。

 麻衣はこれまで、恋をせずに自分のために時間を使い、仕事や趣味に全力を注いできた。同じように「恋愛や結婚がすべてじゃない」と思っている人もきっと少なくない現代。そんな生き方も素敵だが、その一方で、心の奥底では「恋をしたい」「誰かを愛したいし、愛されたい」と願っている人もいるはずだ。本作は、そんな繊細で複雑な大人の心に優しく光を当てた物語だ。

 青春漫画のようなきらめきにはもう共感できない。でも、ときめく気持ちは忘れたくない。麻衣の物語は、そんな揺れる気持ちに寄り添ってくれる。亮との関係を通して、少しずつ心を開いていく麻衣の姿に、読者もまた勇気をもらえるはずだ。恋に一歩を踏み出せないすべての人に、甘すぎない大人のためのラブストーリーを楽しんでほしい。

文=ネゴト / fumi

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