うっかり孵化させたのは世界を左右する子竜。“偽り夫婦”として育てる子竜と恋心【書評】
公開日:2025/6/2

『竜騎士さまとはじめるモフモフ子竜の世話係』(式部玲:漫画、紫月音湖:原作/マイクロマガジン社)の舞台は、竜と人が共生するメルトシア王国。二人の男女が子竜の世話を通じてお互いの信頼と愛を深めていくファンタジー&ラブロマンスだ。
ある日、竜卵の密猟者に巻き込まれ人質となっていた最中、うっかり幻竜の卵を孵してしまう。フィオナが孵したその竜は、成獣になるまでの2年間で多くの幸せを感じれば聖竜、その逆の場合は世界を滅ぼす暗黒竜となってしまう危険な存在だったのだ。
竜騎士・ヴィクトールによって救出されたのち、国王からの命令でヴィクトールと共に幻竜の世話をすることになったフィオナ。この王命によって、平民であるフィオナが大役を務めることに対して周囲の人々から不満の声が挙がるというシリアスな空気を想像させつつも、温かく和やかな展開が繰り広げられる。
子竜の世話とフィオナの保護のため、自分の婚約者という体でフィオナを自宅の屋敷へ招き入れるヴィクトール。その場面では屋敷中の者が「ヴィクトール様が婚約者を連れて来た!」と歓喜する様子が描かれており、フィオナを迎え入れる温かい雰囲気が心地よい。
また一見クールなヴィクトールだが、実は屋敷の使用人や騎士団の仲間、はたまた幼馴染にからかわれると赤面して反論する可愛らしい面も持っている。フィオナは、そんな彼を可愛いと思い始め好感を抱いていくのであった。
回を追うごとに互いの距離が少しずつ縮まっていく様子が丁寧に描かれ、早く本物の夫婦になって幸せになってほしいと思わずにはいられない。子竜を育てる具体的なエピソードはもう少し先になりそうだが、二人がどんなふうに幸せを育んでいくのか、そしてその幸せが子竜にどんな影響を与えていくのかが見所となるだろう。
ファンタジー漫画でキュンとする展開、そして育成系乙女ゲームのワクワク感やモフモフ系の動物的可愛らしさを求めている方は本作を手に取ってみてほしい。