親友のハイスぺ婚約者を略奪。結婚するのは私!と有頂天の悪女が地獄に突き落とされる、ラスト1話は必見!【書評】
公開日:2025/5/30

女性の屈折した感情と略奪愛をリアルに描き出す『Stolen Love あなたの彼、私がもらうね』(碧木唯:原作、優姫夢:漫画/KADOKAWA)。
本作に登場するのは、美人で大人っぽい亜沙美と、誰からも愛される“いい子”の麻友。正反対の魅力を持つふたりは、高校時代からの親友だ。しかしその裏では、亜沙美が麻友の歴代彼氏を次々と奪っていた。
社会人になってからもふたりの関係は続き、ついには亜沙美が麻友の元恋人・聡を奪い、“結婚”という一撃で麻友に勝とうとする。だが、麻友からの急な結婚報告によってその計画はもろくも崩れさってしまうのだった。
イケメン外科医という、見た目も肩書きもトップレベルの麻友の婚約者。そんな相手に亜沙美が惹かれないはずはなく…。
本作の見どころは、人間の奥底に潜む、痛々しくも複雑な心理を描き出している点にある。亜沙美は、自身も十分に魅力的な存在でありながら、どうしても麻友に対する劣等感を拭いきれない。その劣等感から、「いつか麻友の笑顔を歪ませてみたい」そんな異常な執着心に突き動かされてしまうのだ。
しかし、奪うことで得られる快感は長くは続かない。だからこそ、モデルのような容姿を持つ聡を手に入れたあとでさえ、亜沙美の視線はすでに「次の麻友の恋人」へと向かってしまうのだろう。
お得意の手練手管で麻友の婚約者の懐に入り込んだ亜沙美。なんと麻友と婚約しているはずの彼から指輪までプレゼントされてしまう。勝ち誇り、幸せを噛みしめる亜沙美。
しかしここから思いもよらぬ大どんでん返しによって、地獄へ突き落とされてしまう。
愛されたいという渇望と、コンプレックスが生み出す心の歪み。ページをめくるたびに、心の奥底がざわつき、痛みとなって胸に迫る。人間の欲望と弱さを、容赦なく、しかしどこか哀しみをもって映し出す作品である。
嫉妬に心を支配され、どうにかして麻友を陥れようとする亜沙美の姿は、痛々しくも目が離せない。誰の心にも潜む「ないものねだり」という感情。そのもろさと危うさを、真正面から描き出した本作。スカッとする結末をぜひ見届けてほしい。