妻に内緒で87万を課金したスマホゲーム中毒の夫。その悪影響は子どもにまで――他人事ではないソシャゲ依存症の罠【書評】
公開日:2025/6/9

今、多くの人にとって馴染みあるものになっているソーシャルゲームやアプリゲーム。日々時間つぶしにハマっているゲームがある人も多いのではないだろうか。
だが、中には、そんなゲームに度が過ぎたハマり方をしている人も。『子どもの命よりソシャゲが大事ですか?』(aco:原作、茅野:漫画/KADOKAWA)もまたそのタイトル通り、夫の“ソシャゲ依存症”に頭を悩ませる家族の物語を描いたマンガだ。
倹約家の夫・達也と結婚し、2人の娘に恵まれた妻・清美。彼女の最近の悩みは、夫がずっとスマホをいじっており、家事も育児もロクに手伝わない事だ。外面ばかり良い夫にしびれを切らした清美が彼のスマホを調べると、どうやら夫はとあるソシャゲ(ソーシャルゲームの略)にすっかりハマっている様子。
さらに調べると彼はそのソシャゲに日々の時間を浪費するどころか、娘のための育児費用までつぎ込んでいた。その金額、なんと1カ月で87万円! すっかり激怒した清美がどうにか夫をゲームから引き剝がそうとするものの、達也の“ソシャゲ依存”はますます悪化してしまい――。
近年さまざまな面で、その問題が可視化されつつあるソシャゲ依存症。その多くは今作の達也のように、お金を使いこんでしまう金銭トラブルや、周囲の人々にいろんな迷惑をかける人間トラブルへ行きつくケースもあるという。
ゲームに熱中するあまり、本来使ってはいけないお金まで使い込んだり、いろんな所に借金をしてまで課金に注ぎ込んだり。あるいは生活や仕事が疎かになり、誰かに迷惑をかけるまで時間を割き始めると、それはアルコールやギャンブルと変わらない依存症=病気だ。
だがソシャゲ依存症は本人の性格・気質が大きな原因となる一方で、依存症の人間を生み出しやすいゲーム側のシステムも、近年は徐々に問題視されつつある。そういった点が描かれている所も、本作の読みどころのひとつだ。
作中では金銭トラブルのみならず、依存症でさらなる身の破滅を招いていく達也。これを読んでいるあなたは思い当たる節はないだろうか。「もしかしたら、自分も達也みたいになっている?」。そう自問自答するきっかけとしても、ぜひ気軽に本作を手に取ってみてほしい。
文=ネゴト / 曽我美なつめ