もし自分の子が、本当の子じゃないとしたら? 親子の絆は血縁か、共に過ごした時間か。医療事故に巻き込まれた2組の親子の葛藤と決断【書評】

マンガ

公開日:2025/6/15

 妊娠・出産の高齢化にともない、年々増えている夫婦の不妊治療。とある調査によるといまや約4.4組に1組の夫婦が不妊の検査や治療を経験しており、約12人に1人の赤ちゃんが生殖補助医療を経て生まれているという。

 そんな不妊治療の中で、“あってはならない間違い”によって大きく運命を変えられた親子2組。彼らの物語を描いたのが、『うちの子、誰の子? もしもわが子が取り違え子だったら』(たけみゆき:漫画、ママリ:原案/KADOKAWA)だ。

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 本作の主役である三橋家は、どこにでもある普通の一般家庭。だがある日、一人っ子の愛娘・サクラが不妊治療時の受精卵取り違えにより生まれた子で、夫婦とはまったく血が繋がっていなかったと発覚する。

 ふたりの本当の子・ユウマを現在育てている滝田家とも顔を合わせ、子どもたちの今後についても話し合いを続けていく三橋家。これまで我が子として可愛がってきた子と、血の繋がった子。どちらが自分たちの“本当の子”なのか。不運な医療事故に巻き込まれた親子2組の葛藤を、細部まで丁寧に描いている。

 本来ならば絶対にあってはならない、受精卵の取り違えという重大な医療事故。だがいまや不妊治療や体外受精といった手段が特別なものでない以上、本作のような状況は我々の想像より近くにあるものかもしれない。そんな“もしも”を我がことのように考えさせてくれる本作。

 “親子の絆”とは? 彼らはどのように考え、最終的にどのような決断を下すのか。究極の選択の中で、選んだ決断に絶対の正解はない。だからこそ選んだ未来を自分の手で正解にしていくこと、過去の幸せや思い出を否定しないこと。それこそが本作で描かれる最も重要なメッセージであり、他のいろいろな出来事にも通じる考え方なのだろう。

 結婚している人もしていない人も、子どもがいる人もいない人も、この物語から「自分ならどうする?」を考えてほしい。

文=ネゴト / 曽我美なつめ

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